【stage1】

これはソニック達が活躍した時代から何年か後の話。
世界は確実に平和の道を進んでいた。


ここはシアターパラダイス。世界一キレイな水と世界一フルーツの種類が多い島である。

「究極の生命体が…チャオー？」

水色のピュアチャオを撫でながら独り言のように喋る赤いハリネズミ。
このハリネズミの名前は「サウダー」。「サウダー・ザ・ヘッジホッグ」。
ちなみにヘッジホッグの名はソニック達とは関係なく偶然同じ名だったらしい。
全身を覆う毛は真っ赤で所々ボサボサになっている。
撫でられているチャオはまだコドモで、撫でられながら嬉しそうに鼻歌を歌っている。

「そう。Dr.クライシスのレポートにはそう書かれていた。」

チャオを眺めうっとりとしながら喋るのは青い小ギツネ。
名は「レイル・ハット」。
他のキツネに対して比較的小さい体つきだが目がつり目で鋭く、第一印象としては悪ガキっぽい、が一番だろう。
表情から察するにかなりのチャオ好きのようだ。

「チャオといっても「究極」のチャオなんだろうな。
　クライシス博士がこのレポートを書いた時既にチャオの存在は世間に知られていたようだし…」

よくはわからんな、と呟くと苦笑いして頬をポリポリとかいた。
するとサウダーはチャオに手のひら大の木の実を与えレイルをジッと見た。
その目は好奇心旺盛の子供のような目であった。

「究極のチャオ…か。どんなだろうな！？」

サウダーは木の実を食べるチャオを横目で見ながら目を輝かせた。
二人そろってチャオ好きのようだ。

「僕も実に興味がある。クライシス博士といえば様々な功績を残してきた人物だ。
　一度見てみたいものだな。」

フッと口元を緩ませると鞄から例の「クライシス博士」とやらのレポートを取り出し黙読を始めた。

「んで、結局そのチャオって完成したのかよ？」

興味深々、といった顔でレポートをチラッと見た。
するとサウダーはハッとひらめいたように喋り始めた。

「完成はしたみたいだ…が。現物が残っているかわからないんだ。
　博士の研究所はこの島にあった事は確かなんだが…。
　その生命体を見た、という報告はまだないな。」

フゥ、と溜め息をつきつかれたようにサウダーに解説した。
つづいて鞄から表紙に「てがかり」と書かれた手帳を取り出した。
「てがかり」の字は随分昔に書かれたもののようで字体はほぼ子供の落書きだった。
馬鹿にするようにその字を見つめるサウダーを無視して手帳を開く。

「手掛かりはこれひとつなんだよな。」

が、手帳には「研究所はシアターパラダイス」としか書かれていなかった。
他のページはまっさらでとても昔から使っているとは思えない。
ならば「てがかり」の字は最近書いたものなのだろうか、といった予想はしないでおこう。

「んなのでわかるわけねーだろが！この島バカデカイの知ってるだろー！？」

手帳を睨みつけて大きく怒鳴った。
理不尽、というかなんやら変な怒りである。

「うるさいな。僕だって困ってるんだよ。レポートにもほとんど雑記しか書いてないしね。」

手帳を睨む相手を鋭い目で睨み返しながら冷たく返答した。

「あーあ、っとに最近平和すぎて面白味がねーよなー。」

レイルのかたい発言にアクビをしながら聞くとそう呟いた。
と、同時に丁度サウダー達が体を向けていた方向と逆方向から足音が聞こえてきた。

「ん…誰だ…？」

チラッとサウダーが後ろを振り返った。
そこには黒いローブの姿があった。