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【ロルファム】「フッ、この美麗なるオレのありがた~い話が理解できないとは。レイト、キミは平民以下だよ。いや、そのマヌケ面といい頭の悪さといいまるで……そう、タキオンだ。チャオ界の面汚しとうたわれた、史上最低のチャオ・タキオンにそっくりだ」
【レイト】「史上最低? そうなのかなあ」
【ロルファム】「ああ、史上最低さ。外見ダメ、資金力ダメ、頭脳ダメでいいとこまったく無し」
【レイト】「会ったことあるの?」
【ロルファム】「あるわけがないだろう。じじい世代のチャオだし、遠い昔の……ちょうどあの事件以来失踪(しっそう)したって話なんだぞ。ロルフィーヌのじじいはなぜだかそのタキオンとかいうダサチャオを漢(おとこ)として買っていたようだが、気になってタキオンに関する資料を調べたら出るわ出るわ不始末の数。じじいもタキオンのバカがうつってあんなわからず屋になっちまったんだろうよ。まあそういうことだからレイト、キミは今までの名前を捨てて『タキオン2世』とでも名乗りたまえ。そのほうがしっくりくるだろうよ、はーはははははは!」
【レイト】「うわ、なんかそれイヤだな。『キ○肉マン2世』みたいで」
踏まれたまま本当にイヤそうな顔でロルファム君を見ようとするレイト君。
いつからそこに居たのか、ピンク色のミズチャオがロルファム君に声をかけます。
ピンク色のチャオの胸についているバッジには「エーテル」と……なるほど、どうやら彼女がレイトくんが約束をしたと言い張っているウワサのチャオのようですね。
【エーテル】「ロル君。あなたまたそんなくだらない事やってるの」
【ロルファム】「おお、うるわしきマイスイートハニー、エーテル姫。クラスのチャオどもをひきつけるその魅力・輝きはこの美麗なるオレのためにある」
ロルファム君の足がレイト君から離れ、エーテルちゃんのもとへと動きます。
そして……んまっ、ロルファム君ったらキザったらしくエーテルちゃんの右手に口づけをしちゃった。
2チャオを囲んで、わざとらしくヒューヒューと騒ぎ出すロルファム君の子分チャオたち。
エーテルちゃんは突然の不意打ちに戸惑っている模様。
そこへ、ようやく立ち上がれたレイト君が2チャオの間に割って入ります。
【レイト】「やめなよ、ロルハム。エーテルちゃん嫌がってるじゃないか。そもそもエーテルちゃんとはぼくが先にやくそくしたんだぞっ。さ、行こうエーテルちゃん」
少し強引にエーテルちゃんの手を引っ張ろうとするレイト君の手を、ロルファム君がべちーんとたたきます。
【ロルファム】「いっちょまえにエーテル姫の前では強気な態度なようだが、そうはさせるか、平民。いや、キミは姫と王子の仲を引き裂く悪い魔法使いだ。それも自分の魔法で自滅するタイプだな、マヌケめ」
【レイト】「いたたたた……。じゃない、おんどりゃー! ロルハム、今日という今日はゆるさないぞ!」
【ロルファム】「はーははは。ゆるさなければどうだというのかね?」
【レイト】「おらおらおらおらおらおらおらーーーー!!」
おやおや。
レイト君、威勢だけはいいですがそれはただ手をぶんぶん回しているだけで、ロルファム君に額を押されて立ち往生(おうじょう)してますね。
【ロルファム】「さて、と。ダメダメは放っておいてオレと一緒に帰ろうではないか、姫君」
【エーテル】「やめとく」
【ロルファム】「はーははは! よいではないか、よいではないか」
【エーテル】「あ~~~~れ~~~~!」
なんということでしょう。
これでは時代劇でよく見かけるおたわむれの殿と、とらわれの町娘みたいではありませんか。
あわてて止めに入るレイト君ですが、ロルファム君の張り手をくらって倒れました。
頭のマークがぐるぐる模様になってしまっていますね。