atasi視点

優しくだくって結構ムズカシ。
感情を込めて抱いたら簡単に出来ることなんだろうね。
なんて、又、
感情のないことをリスクにしている。

でも、本当にリスクだった。

チャオはいつまで経っても、白くならない。
だからといって黒くもならない。
いつまでも、ニュートラル。
ハートを出すことには出すが、ニュートラル。

理由は言われなくても分かっていた。
感情。
いつ直るかも分からない、理由。
でも、それが悲しくない。焦ることもない。
涙も出なかった。
自分のヒーローにしようと決めたことが打ち砕かれても。
事実だけしか頭に浮かんでこなかった。

私はいつまでも水色のチャオを眺めていた。

いつまでも、私は眺めていた。

いつまでも、チャオは水色。

boku視点

もの悲しい思いで今日も訪れる。
そのドアは白くてぶすっとしている。

医師はある一瞬だけ、そう、本当に一瞬だけ、
感情が回復することがあると言った。
しかし、いつ直るかは言わなかった。

俺は悲しくなった。
そして、少し彼女の感情のなさをうらやましがる。
あのチャオを投げたときと同じように。

でも、俺は首を横に振った。

そして、思った。そうだ、希望を持とうと。

ある強い感情が俺を包んだ。
やっぱり、感情がある俺で彼女を支えよう、と。

atasi視点

―へぇ、そうなんだ。

私は理解ということで頷いた。
そこに感情はない。

私は髪の毛を手でときながらチャオを眺めた。
感情が一瞬だけ回復する。
それを聞いて、嬉しいとは思わなかった。
あぁ、そうですか。
それだけ。

彼は帰っていった。

私はまたチャオを二人きりになる。
折角だから観察してみる。
きらきらした瞳。何かを訴えかける瞳。

チャオもまた、彼と同じく何かを言いたかった。
それは分かった。
でも、それは分かることはない。

チャオははてなを頭に浮かべた。
そして、しばらくの間何かを考えた後、こっちを向いて、

にこっと笑った。

その時、ふと頭のなかの何かがパンとはじけた。

boku視点

俺は昔の彼女といたときの思い出を探っていた。

昔、彼女は少しのミスを親にしつこく言われて、
今と同じようになったことがあった。
感情を何かに止められているような。
そんな感じで。

あの時、俺は他の子どもから敬遠されていた彼女に、
そっと近づいて、言った。

―遊ぼうよ?

自分で言ったら恥ずかしいが、無垢な笑顔で。

その時彼女はパンと何かがはじけたように、笑った。
そして、大泣きした。

それを思い出したとき、俺は最適な薬を思い出した。
「無垢で、何一つずれがない笑顔。」
それだった。

俺は今までの道を振り返って走り出した。
希望に満ちあふれていた。

俺はさっきよりもきれいになったドアを、
思い切り開けた。

しかし、そこには風に吹かれたカーテン以外に何もなかった。
網戸から涼しい風が吹き付けているだった。
俺は部屋を見渡す。誰もいない。

まさか。

俺は窓のしたをのぞき込んだ。
しかし、そこには普通すぎる空間が広がっているだけだった。
俺は窓を閉じた。
そして、後ろを振り向いて病室を出ようとしたその時だった。

―あれ?又来てくれたの?

車いすに乗って彼女がほほえんで話しかけて来た。

そして、その膝には白くてりりしいチャオが座っていた。

最高の笑顔で。

fin

このページについて
掲載号
週刊チャオ第221号
ページ番号
2 / 2
この作品について
タイトル
手を伸ばせば。
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第221号