第10話
第10話 遺跡の迷路
遺跡の中は真っ暗闇・・・。
ナックルズの灯りだけがたよりだ。あたしは方向音痴だから、こーゆー、迷路って苦手なのよねー。でも、ナックルズは鼻をくんくんさせて、先頭に立って道案内してくれる。なんか、空気の匂いで、わかるらしい・・。すごいなぁ。
ひんやりしたところ。足の裏も冷たい。
あたしたち三人は、いきどまりにぶつからずに、スムーズにすすんでいった。
二時間くらいたっただろーか、ちょっと大きな広い場所にでた。道が八箇所もある部屋。
「ふーん・・・」
ナックルズの足がはじめて止まった。
「この部屋は面白いな。」
ナックルズがつぶやく。あたしは意味がわからない。
「出口への道は多分こっちだが・・。この迷路は・・なにかを封印するためにあるらしい。さっするに王の墓とか・・、お宝とか・・。ちょっと興味あるな」
「興味あるなら、ためしにいってみればいいじゃない?」
ふいに頭の上で女の声がした。あたし達三人は、びっくりして同時に声のほうを見上げた。
「その声はっ!?ルージュか!!」
ナックルズはランプを上にかざして言った。
ルージュって、こうもりのボスの、あのルージュ??
「ご名答! あたしの声を覚えていてくれて、嬉しいわ。久しぶりね、ナックルズ!!」
ルージュはそういうと、天井からひらりと降りた。チャオだ!!やっぱりニュートラル。すこしこうもりににてるかな。まつげの長い、美形のチャオ・・ってか色っぽい・・。
「てめぇ、俺達の後をつけてたなっ!!麻奈はわたさないぞっ!!」
ナックルズが構えた。
「あらあら、そんなに警戒しないでよ。そりゃ、シャドウにたのまれたけどね。でも、あたしはその人間のお嬢さんより、こっちのお宝のほうが興味あるなぁ。
どぉ?あたしと取引しない?この遺跡の秘密をとくのを手伝ってくれたら、あんたたちを見逃してあげる。悪い話じゃないでしょ?」
「てめーなんか、信用できるかよっ。いつもどっちの味方かわかんねぇ行動ばっかとりやがって!」
「ふふ、あたしはあたしの味方よ。いつだってね。それよりそんなこと言っていいのかなぁ。まわりを見てみなさいよ」
そう、あたし達三人は、いつの間にか、たくさんのこうもり達に囲まれていた。ぎゃーー。こうもりって・・近くで見ると・・怖いんだーー。暗闇に目だけギラギラ光っててーー。しかも、うじゃ、うじゃいるもんねー。あたし達は無意識にピッタリ固まった。
「この暗闇で、この数のこうもり相手に、勝算があるっていうの?あんたもそこまで頭が軽くないわよね?」
「くっくそ。いつのまに・・。出口に気をとられすぎていた・・。
選択の余地はないってことか・・」
ナックルズは悔しそうに舌打ちした。
「・・約束だぜ。ここの秘密をあばいたら・・」
「もちろん、約束は守るわ。簡単なことよ。あんたのその鼻でこの遺跡のかくし部屋に案内してくれればいいだけ!」
「しかたないか・・。麻奈、お前に怪我もさせられないし、ここはルージュを信用しよう」
ナックルズがため息まじりにあたしにいった。そりゃ、あたしもこうもりの大群は怖いけどー、このルージュってチャオ・・なんか裏がありそーなんだよなぁ。お宝好きなのはホントみたいだけどー。なんで自分でさがさないで、ナックルズを使うのかな。
あたしが返事に迷っていると、ファインが重々しく言った。
「遺跡の秘密の部屋にいってはなりません。昔から何人かの愚かな者達が試みて、無残な結末をたどりました。どんな恐ろしいことがまちうけているか・・。そんな危険なところに麻奈様を連れて行くことは絶対になりませんぞ」
ファインの言葉が低く響き渡るのを、皆が息をのんで聞いた。
「・・・ってアラビカ様がおっしゃってます・・」
ファインは皆の注目を浴びているのをかんじて、少してれくさそうに付け加えた。
「なるほど・・読めたぜ!」
ナックルズがルージュをにらんだ。
「お前、俺達にトラップと格闘させて、最後においしいところだけもっていこうとしてんだろ!!どうだ、ルージュ!!図星だろっ!!」
「だったら、何?」
ルージュは冷ややかに笑ってみせた。
「やっと気づいたの?そんなことでもなきゃ、このあたしがあんたなんかと取引するわけないじゃない。でもね、いい話だと思うのよ。この世界を救う勇敢な麻奈様に必要な情報が、その部屋にあるかもしれないじゃないの。あんた達にも損はないと思うけど」
ルージュはそう言いながら、あたしの目をまっすぐに見つめた。
あたしははっとした。このルージュは・・敵じゃないかも・・。あたしにその部屋へ行かせようとしているように思う・・。お宝も、シャドウにたのまれたっていうのも・・なんか方便っていうか・・。ルージュの真意はハッキリしないけど・・この世界のことを真剣に想ってる気持ちが・・なんとなくわかる・・。
だってその気になれば、いつだってあたしをこうもりでさらえるし・・、ルージュははじめからあたしをシャドウ