第9話の続き
まだあいつのことが・・好きなんだなぁ。悔しいけど。もし・・もし人間の世界にもどれたら・・まっさきにあいつに会いたい。あいつがたとえ逃げても・・今度はあきらめたりしない。どこまでも追いかけちゃうーー。
でも・・もしか記憶がもどったら・・あたしはどうなるんだろう。なんかこの世界で重要なポジションにいるらしいし・・人間の時の記憶は・・どうなるんだろう・・。
いやっ!!あいつのこと忘れるなんて!!絶対いやーーっっ!!
「麻奈様っ!!どーされたのですか??」
はらはらと泣いているあたしを見て、ファインがかけよった。
「ん、急に怖くなっちゃった。」
「だらしねーな、麻奈。しょーがないから思い切り泣きなよ。そのほうが、ためこんでるよりすっきりするぜ。・・・でもな、つらいのはお前だけじゃないんだぜ。俺だっていろいろ複雑なのさ。シャドウもな。まぁ、こういう時代に生きてるんだ。みんな、いろいろあって当たり前なのさ。」
いろいろ複雑そーにみえないナックルズがいうと、妙に説得力ある・・。
そっか、この世界は滅び行く運命の中にいるんだっけ。みんなが幸せなはずないよね。
そのキーワードがあたし・・らしいし。
「ごめん、ナックルズ。もう、弱音ははかないよ。
あたしのために石にされたアラビカや、戦ってくれたヴァンや、危険をおかして助けにきてくれたあんたたちのためにも・・自分のためにもね。泣いてる麻奈なんてらしくないもん。よし、いろいろ考えるのはやめーー。今はヒーロー王国に無事に着くことだけに集中するぞっ!!」
あたしは立ち上がると、涙をぬぐったその手でこぶしをつくって上にあげた。
「はいっ!麻奈様!このファインが守って見せますから、安心してくださいっ」
ファインも立ち上がってこぶしを上げた。
「それは、俺のセリフだろーーっっ!」
「あはははははははははは」
三人の笑いがドーム型の天井に響いた・・そのとき、
バサバサバサバサバサッ。
なにか黒い群れがこっちにむかって飛んで来た。あれは・・?
「やばいっ。ルージュのこうもり達だっ。すぐかくれろっっ!!」
あたしたちは柱の影に身を潜めた。こうもりの黒い群れは、何本かの柱の間をSラインをえがいて飛び去っていった。姿が見えなくなると、ナックルズがささやいた。
「この先はまずいな。仕方ない、少し遠回りだが、遺跡の道を行こう。たしか・・扉がこのへんに・・」
するとファインが言った。
「アラビカ様は遺蹟は迷路になっていて、大変危険と反対しておられます。」
「そんなことは百も承知さ。けど、この先にはルージュのこうもりがいるんだぜ。暗闇の戦いじゃあ、ルージュに勝てる保障はできない。・・いや、もちろん俺が負けるはずはないけどよぉ、麻奈をまもれるかどーかは疑問だぜ。」
ふふん、なんだかんだと急に弱気じゃん。この自信家のナックルズがここまで警戒するルージュって・・何者なのかしらん。
「迷路なんて、俺がぶっこわして道を作ってやるさ。食料も少ないし、ルージュに足止されるわけにはいかないぜ。ヒーローサイドまで後三日はかかるんだ。なっ、麻奈はどーする?」
「あたしはナックルズにまかせるよ。あんたがビビル、そのルージュって奴にあってみたい気もするけどねー。」
あたしはからかい半分で言った。ナックルズはおおまじめな顔で反論してきた。
「な☆ 俺がいつびびったっっ!!俺とあいつは互角だぜ。だがな、俺はヒーローライトカオス女王にお前を無事に王国に連れてくるよう、頼まれてんだ。俺は安全な遺跡のほうをとるぜ。迷路が怖くてルージュも追ってこれねーしな」
「冗談だよーー。すぐムキになるんだからっ。うん、いいよ、遺跡に入ろう。ね、いいでしょ、アラビカ・・じゃなくてファイン。」
ファインは少し不安そうにうなずいた。
「よし、ここが入り口だ。」
ナックルズが重い扉を両手で力いっぱい押し開けた。
ギギギーーー。
1000年以上前の世界への扉が不気味な音を響かせて、開かれた。
なかからひんやりとした異質な空気がながれでている。ナックルズはランプに灯りをつけて、前にかがしながら慎重にすすんだ。
「さて、こうもりたちが戻ってくる前にいくとするか」
・・・。
あたしとファインは無言でナックルズの後についていった。
あたし達が遺跡の中に入るのを、ドーム型の天井の上からみおろす影があった。
「遺跡の迷路ね。フフ。面白くなりそう・・。」
あたし達はうかつにも、誰一人、彼女の存在に気づいていなかった。
☆あとがき☆
気がついたら今回で9話目。来週はいよいよ10話になるのねー。まさかこんな長期連載になるとは・・予想外でした。話がふくらみすぎっっ。でもちゃんとラストのお話はできてるんですよー。
ともあれ、こんなに続けられたのも愛読してくれる皆様のおかげです。いつも暖かい感想をありがとう。
絵本の方もどうかよろしくなのでした。