第八話

第八話 脱出


振り返ると、アラビカの洞窟で、あたしに飲み物をくれたコがいた。

「私の後についてきてください。」

「う、うん。」

そのコは、右の扉のむこうにすばやく入っていった。あたしも慌てておいかける。
この部屋は大きな暖炉といすがたくさんあった。そのコは迷わず火のついていない暖炉の中に入る。と、暖炉の下に隠し階段があるでないのーーー☆なんか、感心してしまうー。

「ちょっと麻奈様にはせまいですけど・・降りられますか?」

ちょっとどころじゃなくて、ちょーせまいっっ。しかもすすや、ほこりが体中に・・・あーーん、このドレス、じゃまーーー!!んでもあたしは根性で、暖炉の穴から下に降りた。ふう、なんとか成功。ドレスはボロボロだけど。せっかくあたしのために作ってくれたのに、なんか悪いなぁ。このさい、追われてるんだから、しかたないか。
暖炉の下は暗い螺旋階段がはてしなく下まで続いていた。さっきよりはせまくないし、ところどころ明かりもある。

「一番下まで降ります。まだ安心はできません。急いでください」

あたしとそのコはひたすら階段を駆け下りていった。螺旋に目が回りそう。ぐるぐる、ぐるぐる、どこまでおりりゃー、地面なのかいな。うーーっ、このドレスさえなけりゃあなぁ。

はぁ、はぁ。

あたしの息があらくなり、一休みさせてーーー、と口ばろうとした時、やっと地面についた。その先には、ながーーい地下通路が広がっていた。宮殿の地下に、こんなものがあるとはーーー。

「水、水のみたいっっ!」

もぉ、喉カラカラだよーー。ハラもへったし・・。

「ホレ、これでも飲みな。」

「おっ、サンキュー☆」

あたしは差し出された黄色い飲み物をいっきにのみほした。
はぁーーっ、うまいっっ☆マンゴーのよーな味だわん☆
ってコイツ、誰だ??

「フフン、人間か。はじめてみるぜ。」

腕を組んで、斜め目線でにやにや笑いながらそういうコイツは、チャオだけど、ダークでもヒーローでもない・・。赤くて、ストパーロンゲで、手の白いグローブがやたらでかい。

「よっ。はじめまして、だな。麻奈サン。
俺はナックルズ・R・チャオ。ヒーローライトカオス女王に頼まれて、わざわざ助けにきてやったんだぜ。」

「はぁ、そりはどーも。ナックルズさん・・」

「ナックルズでいいよ。
ダークサイドといっても地下は俺のなわばりだ。人間一人連れ出すなんて簡単さ。
あのシャドウも、地下じゃ相手にならないぜっ。」

まぁ、それは心強い・・。自信家で、乱暴な言い方すっけど、いい奴そう・・。

「しかし、なんだなー、その服どーにかしないと・・。」

そーなのよねー。ここからヒーロー王国までけっこう距離ありそーなのに・・この格好じゃあ、三倍時間かかりそー。

すると、あたしを案内してくれたコがごそごそと、あたしのもと着ていた服を差し出した。

「やりーー☆用意いいじゃん。」

なんて気のきくいいコなのぉ。あたしはパパっと着替えるとそのコを抱きしめて言った。

「ありがとーー☆あなた、名前なんてーの?」

「い、いえ。そんな。」

そのコは黒い顔を真っ赤にしてる。

「すべてアラビカ様のお指図なのです。私は従っているだけで・・・。わ、私はファインといいます。」

「え? アラビカはやっぱり生きてるのね☆」

「はい、石になったままのお姿で、私に思念を送ってくれています。私はまだみならいですけど、一応、弟子なので。」

なーる、テレパシーって奴か。

「おいっ、着替え終わったなら グズグズしてねぇで、行くぞっ。」

「ハイハイ、お待たせしましたー。いこーーーっ!!」

あたし達三人は地下通路をいっせいに走り出した。
でも、すぐあたしは立ち止まった。

「まってよっ。ヴァンは?ヴァンはどこ??ヴァンを置いてけないよっっ!!」

「なんだよっ。止まるなっ。
ヴァンならとっくに檻からだしてやったさ。今頃ヒーロー王国に着いてるぜっ。」

「なーんだ、よかったー」

「オラオラ、急げっっ!!」

ムッ、ほんとに口の悪い奴。(人のこといえんが)
んでも、こーゆーノリのほうが慣れてていいかんじ。

「ナックルズ!!ジーンズの麻奈様の足は速いわよーーーっ。」

あたしは笑いながら、ナックルズを追い抜いてやった。
だいたい、コンパスの長さが違うもんねーーー。

「なっ、なにーーーっ!!」

ナックルズはムキになってダッシュをかける。おっ。まあまあ早いじゃん。

「きゃーーー、置いて行かないでくださーーい。」

三人の脱走(かけっこ?)がはじまった。



★あとがき★
皆様大変おひさしぶりなのです。やっと続きを載せられました。お話の前回までがお知りたい方は、ホムベクリックの小説置き場に全部のせています。・・・今まで載せられなかった理由は・・絵本のプレッシャーでーす。発売前は・・緊張するのねーー。てなわけで、絵本もどーかよろしく☆なのでしたーー☆

このページについて
掲載号
週刊チャオ第37号
ページ番号
12 / 27
この作品について
タイトル
天使の卵
作者
ちいるん(ラブルージェ)
初回掲載
週刊チャオ第26号
最終掲載
週刊チャオ第45号
連載期間
約4ヵ月14日