第七話

第七話 ダーク帝国の宮殿

歌・・・。
歌が聞こえる。きれいなソプラノの声の。
あたし、この歌知ってる。
ずっと小さいころから毎晩聞いていた。
そう、お母様が歌っていた。
これは・・あたし?
ベットに寝ている、水色のチャオ。
そう、これは、あたしだ。
その横で、チェアにゆられているのは、真っ白なチャオ。
長い耳のさきがピンク色で・・頭に金の冠。
あれはお母様。
お母様がやさしく子守唄を歌っている・・・。

「ねむれ、愛しい娘。
 天も、地も、すべてあなたをいとおしんでいる。
 この世界にのぞまれて生まれた あなた。
 あなたの光が みなの光となるその日まで。
 ねむれ、すこやかに。
 ねむれ、愛しい娘よ。」


「お母様っっ!!」

あたしは飛び起きた。

「麻奈様、お目覚めですか?」

ん?ここって豪華なでっかいふかふかベットの上じゃん。
うわーー、天井たかーーい。キンキンキラキラの部屋――。
ほりものが見事だわーー。床は大理石。
大金持ちというより、写真で見たヨーロッパのどっかの宮殿って感じーー。
んで今のは夢らしい。リアルな夢だったけど。
そばにいるのはかわいらしいかんじのダークチャオ。白いエプロンつけてる。かわいいっっ☆
そういやあ、シャドウも高級そうな服着てたなぁ。腰には短剣もささってたし・・。なんかりっぱそーに見えたのは、服のせいもあったかもねーー。
人間の世界で見たチャオたちはなんにも着てなかったし、はだしだったのにーー。
こっちにきたらみんな服きてて、ブーツみたなくつはいてるなぁ。

げげっっっ☆
あたしってばいつのまにか白いドレスふうのひらひらの服きてるじゃあないのーーー。
い、いつのまにーーー??

「お気にめしませんでしょうか。そのお休み用のシルクドレスは、シャドウ様が選ばれたものなのですよ。」

えええええーーー!!
もしか、まさか、その・・・。

あたしが顔を赤くすると、そのダークチャオは笑っていった。

「くすくす。
ご安心ください。お着替えはわたくしがしてさしあげました。いくら婚約者でも、シャドウ様はお式の前に そんな無礼な真似はなさいませんわ。
私は麻奈様の身の回りのお世話をするよういいつかった、モネでございます。なんでもいいつけてくださいまし。麻奈様のお世話ができるなんて、身に余る光栄でございます。」

「はあ・・。」

まずは安心。そーよね、ちと考えすぎだったな。しかし慣れないな、こう敬語つかわれるのって・・。うーん、おちつかん。

「さっそくですが、こちらの紫のドレスに着替えていただきます。シャドウ様が別室にておまちかねでございます。」

モネはそういうと、有無をいわさずてきぱきとあたしを着替えさせていた。あたしはなすがまま、大きな等身大の鏡の前につったっていた・・・。うーーー、コルセットきつーーーい。こんなのしたの生まれてはじめてだよーー。きれいな細かいレースがたくさんついた上品な紫色のロングドレス。見た目よりふわっと軽いのねー。でも、こんなの結婚式でも今どき着ないのではないかなーー。もちっとパリコレ風のスマートなシンプルドレスなほうがすきなんだけどーー。

すると部屋にいた他のエプロンのダークチャオが二人近づいてきて、あたしの髪やらメークやらいじりだす。おお?!なんか中世のお姫様のコスプレしてるみたーーい☆

あたしは正直おもしろがってしまった。やっぱあたしも女なのねーー、お姫様ごっこはたのしーーーなーーー☆

ちとルンルン気分。
だって鏡に映ってるあたしって別人のよーにうつくしーーんですものーー。いや、もとがいいのは自覚してたけどーー。うふっ。ガラスの靴もよくにあってるわーん☆
あたしって・・ナルシストだったのねーー。

ん?でもまてよ、この世界に人間はあたし一人のはずよね?

「あのー、このドレスのサイズ、あたしにピッタリだけどーー、なんで??」

どーでもいいことかもしれないけど、気になって聞いてみた。

「もちろん、すべて麻奈様のサイズにあわせて、一晩で新しくつくったのです。今のところあと6着用意ができていますわ。麻奈様がそのお姿でおられるのは短いとおききしておりますので・・・。これで十分かと。もしご希望でしたらもっとおつくりいたしますが?」

「と、とんでもないっ。それだけあればオッケーですっっ☆てかありすぎっ☆」

あたしのルンルン気分はすっかり消えた!
そうだ、ここは多分ダーク帝国の宮殿。
しっかりしなきゃ。シャドウのいいようにされちゃうーー。
まずはヴァンをさがさないと・・・。

「あのー、モネさん?」

あたしはにっこり笑顔でいった。

「おトイレどこかしら・・・。このドアかな?」

「あっ。そちらは書斎のお部屋の・・・、ああっっ!!麻奈様??!!」

あたしはすばやくドアのむこうに入ると、カチッとロックした。
本がたくさんある部屋だ。おっ。ラッキーにも窓からバルコニーにでられるぞー。
ドアのむこうはおおさわぎ。すぐシャドウに知られるだろう。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第34号
ページ番号
10 / 27
この作品について
タイトル
天使の卵
作者
ちいるん(ラブルージェ)
初回掲載
週刊チャオ第26号
最終掲載
週刊チャオ第45号
連載期間
約4ヵ月14日