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ガチモリは激怒した。ガチギレモリだ。
ガチモリが大切にしていた、洞窟にある岩のミライをペペスが開拓の過程で分解してしまったのだ。ミライが分解されてしまったのだから、ガチモリがガチギレモリになるのもしょうがなかった。
でも、ペペスがミライを分解してしまうのもしょうがなかった。ガチモリがミライを大切にしているなんて、知らなかったのだ。
ガチギレモリもそのことを良く理解していた。しかも相手は崇拝するあのペペス様だ。だからガチギレモリの激怒の対象はペペスではなく、こうなってしまった現実に対してだった。
ガチギレモリは自分がミライを大切にしていることを予めペペスに主張できていたら、とも思った。でも、何もかもが主張されなくてはうまくいかないだなんて、なんで神様はそんな大きな穴のある世界を作ってしまったのだろう。
ガチギレモリはガーデンの芝生を叩いた。出てくる衝撃波が天まで届き、神様をぶん殴ってくれることを祈って芝生を叩き続けた。でも、芝生を叩いてもジジスの体がちょっと浮くだけで、神様には到底届きそうもなかった。
そんなこんなをしている内に、ガチギレモリは拳を負傷し、寝込んでしまった。光があると眩しくて辛いので、洞窟の中で寝込んだ。ガチヒキコモリだ。
ある日、ガチヒキコモリは夢を見た。夢はいつも見ているのだが、その日初めてガーデン以外の場所が舞台になった夢を見た。
そこは、ガーデンとは違って果てがなく、すべてのものが目まぐるしく変化する世界だった。建物は伸びたり縮んだりして、乗り物が高速で動いていて、チャオがいっぱいいた。
ガチヒキコモリは空からそれを見下ろしていた。多すぎる情報量に圧倒されながらも気絶に至らなかったのは、その世界の中に放り込まれるのではなく上から見下ろすだけで済んでいたからであった。
ガチヒキコモリは建物の屋上にペペスを見つけた。ペペスは例の文字列を周囲に展開し、何かを打ち込んでいた。まるで、この世界の変化を操っているようであった。
ガチヒキコモリの尊敬が念が体中を駆け回り、くすぐったさを覚えたところでガチヒキコモリは目を覚ました。ジジスがガチヒキコモリの頭を撫でていた。隣にベベスがいた。ベベスは木の実を一口サイズにちぎっていた。いつもベベスは木の実をちぎって、寝込んだガチヒキコモリの隣にいた。
今日は何やら様子が違った。ベベスがニヤニヤしていた。ガチヒキコモリの違和感は、ベベスの顔だけではない。背中に何かある。
起き上がったガチヒキコモリが自分が寝ていたところを確認すると、そこにはミライがあった。ペペスが再構築してくれていたのだった。
ガチヒキコモリは、ゲンキモリモリになった。
ガーデンのチャオが八匹を超えた頃、一個目のジャムが完全にガーデンの土へ染み込んだ。
それまで何ともなかったガーデンの一角が白く染まった。
それからしばらく、ペペスがその一角に入り浸った。ペペスはその一角の草が土に分解を試みたが、分解と構築の影響を受けなかった。物理的な接触も試みたが、草が枯れることも、土がえぐれることもなかった。ベベスがケツから火を噴いても、燃えなかった。
そんなことをしている間に、次々とジャムがガーデンに染み込んでいった。色々な色にガーデンのいたるところが染まった。
ガーデンが変化していくのを、彼らは喜んだ。日常に於ける大きな楽しみができたのだった。
ガーデンはカオスだった。
色は混ざり合い、元々何色であったのかもわからない状態だった。それだけチャオも増え、タマゴも増え、ジャムも増えた。レース会場はペペス以外のチャオの手によってもさらにアップデートされ、たくさんのチャオが一度にレースできるようになっていた。カラテは一部のチャオ達が極度に好む遊びと化していた。
チャオ達は幸せだった。特にベベスは、たくさんのチャオ達と触れ合うことを何よりも幸せと感じていた。チャオ達もベベスのことが大好きで、ベベスがいるところには笑いが絶えなかった。そして、そんなベベスを見ているジジスも幸せなのだった。