sun-flower.the.baby 3(終)



そのうち、子供が二人、産まれました。

彼はそのたびに、ベランダに、
小さなヒマワリを一本、植えます。

友達である奥さんが「可愛い」とそのヒマワリを、
彼女の家でも育て始めました。
うわさ話が大好きな、意地っ張りな人も、
彼女にふられ、意気消沈している人も、
アパート中で、やがて、ヒマワリを育てる人がいっぱいになりました。

いつの間にか、彼は幸せでした。

彼は幸せをいつどこで手に入れたのか、
誰から貰ったモノなのか、
全く、見当も付きませんでした。

そのアパートは「向日葵荘」と呼ばれるようになりました。
窓から、前庭から、
壁に沿いながら、向日葵が一斉に花を咲かせます。

彼はそうして、そのアパートから離れませんでした。
彼の子供も、向日葵が大好きでした。



ある日、彼は突然光が自分にみなぎるのを感じました。
奥さん—いつかの大学生、は、その様子を不思議そうに見ました。

突然、彼は身体が溶けていく感覚になりました。
どこかで、心のどこかで、
「サヨウナラ」と言っているのが聞こえました。

彼は悟りました。
自分はいつの間にか、
死ぬために必要な「何か」を手に入れてしまったのです。

彼は光の中で、自分の生い立ちを彼女に話します。

そして、今、自分は死ぬことを、
一言ずつ、つらい気持ちに襲われながら、
彼女に話したのです。

「どうして?」
 「どうしてだろ?」
「お願い、行かないで…。」
 「…ゴメンね。」
「ダメ…。」
 「…ありがとう。」
「ダメ…だってば…。」

「なぁ…
 これからも、好きでいてくれるよな?」

彼女はいつの間にか泣いていました。
彼もまた、彼女と一生会えなくなることが、嫌で溜たりませんでした。

彼は彼女の笑顔が見たいと、
ふと笑って、
彼女の頭を撫でてやろうと、手を伸ばします。

しかし、それが届く前に、

光は消え、彼も、消えていました。

そうして、もう二度と、
彼が生き返ることは、ありませんでした。



果てに何があるかさえ分からず
消えていくんだろう?"someday I'll die"
"sun-flower"の種を一粒摘んで
家の中に太陽を咲かせましょう

どうしても避けられない別れは
どこの世界誰にでもきっと来る
そんな時この光が涙を照らすことでしょう
"happy birthday,to you"

小さな強さ 胸に抱いて
泥の中の宝石を精一杯愛してく
例え捨てることが正しい時が来ても
傍でこの目を見ていて欲しい

Nowhere,ah,nowhere,I can go to,
Without you,without you,...

小さな太陽 胸に抱いて
日だまりの坂を駆け抜けていく
例え裏切られ傷つけられ生きてるとしても
傍には誰かがいるのでしょう

だから あなたといられて良かった
ありがとう...



彼の消えた後には、或る一つのモノが残りました。

…一粒の、向日葵の種です。

…そうして、来年、
彼女のベランダには、向日葵が3本咲くのでした。

fin

このページについて
掲載号
週刊チャオ第328号
ページ番号
3 / 3
この作品について
タイトル
sun-flower.the.baby
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第328号