『十六話・試練２』

「みんな～ちょっと休もうよ～」
　誰も答えない。何も言わずにただ歩いている。
「五分だけでもいいから～」
　やっぱり誰も答えない。なんにも言わない。歩いていく。
「ひどいよ～・・・人でなし～チャオでなし～」
　みんな無視をする。ずっと歩いていく。
　フロルが後ろで座り込んでいた。
「僕もう動けない～」
　誰も答えない。ただ歩いていく。
「もしかして楽しんでない～？」
　こらえきれずにフルールが言った。
「YES・・・・ぷっ・・フロル面白すぎ」
「フロルがあまりにもうるさいからいったん休憩な」
　なぜか仕切るダークだった。

　　　　　～休憩中～

「じゃあ行くか」
　セイレーンがそういってすっと立ち上がった。
「え～、もう～？」
　フロルが文句を言ったが誰も相手にしなかった。
「帰ってから休めばいいじゃん。さっさと行こ」
　フルールがそういって、みんな同意した。
　フロルが小声で文句を言ったが、誰にも聞こえなかった。
　みんなまた何も言わずに歩いていく。沈黙の中聞こえるのは全員の足音と水の流れる音ぐらいだった。
「なんで水の流れる音がするの？」
「川があるんじゃないかな？」
　フロルの問いかけにアクアルが答えた。
　またみんな何も言わずに歩いていく。
　アクアルの言ったことが正しかったことはすぐに分かった。
「川がある・・・・」
　目の前には大きな川があった。流れは結構早い。下流の方は暗くてどうなってるのか見えなかったが、嫌な音がした。
「・・・滝があるみたいだ・・・」
　セイレーンのつぶやきにフロルは怖じ気づいた。
「僕砕け散るのは嫌だよぉ・・・」
　どこからそんな結論に至ったのかは分からないが、みんな少し引いた。
　二人(？)をのぞいて。
　一人はバンドゥル。いざとなったら飛べる。それ以前に彼は考え事をしていた。
　もう一人はアクアルだった。彼女はとても泳ぎが得意だ。
「怖がってたってしょうがないよ。飛んで越えようよ」
　アクアルの言葉にみんなその通りだと賛同した。しかし、
「それは無理じゃ」
　バンドゥルが言った。
「なんで？飛んで越えられない距離じゃないでしょ？」
「距離以前の問題じゃ。前をよく見てみい」
　バンドゥルの言葉に、チャオ達は前をよく見てみた。
　たくさんのコウモリがいた。たぶん、吸血コウモリだ。魚食いコウモリも混じっているが。
「飛んでいったらあいつらに襲われるだけじゃ」
「でも、泳いで渡るのはたぶん無理だよ、特にジィニーが」
　ジィニーはカナヅチだった。
「・・・アザラシでも捕ってくるか・・・」
　たぶん無理だろうとみんな思った。バンドゥルもその雰囲気を読んだようで、
「冗談に決まっておるじゃろう」
　といった。しかし、みんな嘘だと思った。
「おお、そうじゃ、確かここの川底にスイッチが隠してあってそれを押すと橋が現れるのじゃった」
　みんなそれならそうと早く言って(思い出して)くれと思った。
　一番泳ぎの得意なアクアルが行くことになった。アクアルは魔法を解いて、エイリアンチャオになっていた。
　アクアルは軽く準備体操をすると飛び込んだ。しばらく潜ってまた顔を出すとすぐに川から上がった。
　みんなポヨを？にした。しかし、すぐにアクアルが戻ってきた意味が解った。大きなナマズが現れたのだった。ナマズで川が半分せき止められ、大きな水しぶきが起こっていた。ナマズはゆっくりと大きな口を開けた。
「久しぶりやなぁ、バンドゥル」
　みんな言葉を失った。
　バンドゥルが簡単にナマズの紹介をし、ナマズに状況を説明した。
「スイッチであらあわれる橋？あれなら数ヶ月前にわしが壊してもうた」
　ナマズがけろりと言った。彼はその代わり向こう岸に渡してくれると言った。もっとも、体を渡らせてくれる、ということなのだが。
　一行はナマズを渡り、お礼を言うとまた歩き始めた。