~第6話・前編~
スパイラル 第6話 傷つきし翼
今日の学校は、今朝の出来事の話題でもちきりだ。
なんといっても大ヒットゲームのキャラクターが街にいきなり出くわして、ゲームと全く同じ追走劇を繰り広げたのだから。
授業になるはずがなかった。
しかし、一番授業にならなかったのがミリル達のクラスだ。
理由は簡単。
転校生が来たからだ。
【???】「今日からこのクラスに入る、サリナスです。よろしくお願いします。」
彼女の姿を見た時、セトラは驚いた。
【セトラ】「まさか・・・!」
【クライト】「?セトラ、見覚えあるの?」
近くの席にいるクライトが話しかける。
【セトラ】「まあ、そういうところだ。
・・・クライト、この事は黙ってくれ。」
【クライト】「・・・ああ、いいけど。」
口封じをした後、彼は小声で、
【セトラ】「・・・僕にとってまずい事になりそうだ・・・」
と一言呟いた(つぶやいた)。
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【リサラ】「小説の調子はどう?」
【ルシス】「まあまあだね。予定通りに完結できそうだよ。」
あれから、リサラがしょっちゅう来るようになった。
本人曰く「寂し紛れ」だが、恋人ならともかく、友達と喧嘩しただけでこれほど落ち込むのも不思議だ。
【リサラ】「どんな感じ?ちょっと見せて。」
【ルシス】「ああ、いいよ。」
・・・・・・・
【リサラ】「ねえ、ここ、変じゃない?」
【ルシス】「・・・ん?・・・・!!???
こんなシーン・・・まさかっ!」
こんな記述は書いてない。
そう、トレイス達がミリル達の世界に乱入したなんて。
となると、やはり・・・・・
【リサラ】「ひょっとして、『アイツ』のせい?」
【ルシス】「間違いない。
とりあえずそこだけ切り取って、週刊チャオに出すのを書き直しだ。」
時空の支配者―――――
この言葉が再び頭をよぎる。
時空の支配者=神、だとするリサラに意見は間違っていない。
・・・というか、よく考えた時に、この式以外は成り立たないのである。
とりあえず、小説の続きを書く。
僕には、それしか出来ない。
むしろ、それさえも危うくなってきたような気がした。
【リサラ】「そりゃ、神様に小説を書き換えられたらねぇ・・・。」
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昼休み。
セトラが廊下の隅で考え事をしていた。
【セトラ】「まさか・・・しかし、何故だ?」
自問自答は終わらない。
と、その時である。
【サリナス】「・・・久しぶりね、セトラ。」
【セトラ】「・・・サリナス・・・
何故ここに来た?」
【サリナス】「そんなもん親の都合に決まってんじゃん。単なる偶然。」
【セトラ】「あれ以来僕は君とは語らないようにしてきたのだが・・・君は僕の決心を破る気かい?」
【サリナス】「何言ってんだか。過去は過去、現在は現在よ。その証拠に、今のあたしはあの頃のあたしじゃない。
再び仲良くやっていかない?」
【セトラ】「君にはいつも感心するよ・・・。仕方ないな、忘れてやるよ。」
【サリナス】「忘れなくて結構。あれは、いい思い出として。
・・・あの頃を思い出すわね・・・。」
【セトラ】「・・・思い出に耽っている(ふけっている)暇はないぞ。もう授業だ。」
廊下の隅という、誰も見られないような場所で話していたにも関わらず、噂はすぐに広まるもの。
放課後、またクラスは大騒ぎになった。
【セトラ】「・・・くっ、バレては仕方がない。事情を説明してやる。」
それは、4年前のこと。
当時別の学校でクラスメートだったセトラとサリナスは、「未来を担う天才コンビ」としてマスコミからもてはやされていた。
そう、2匹とも当時からかなりの天才だったのである。
数々のテレビに出演して有名になった。
・・・そこまでは良かったのだ。
一気に悪夢に変わったのは、あるテレビ番組に出演した時の話。
そのテレビ番組は特番を組んで、「セトラとサリナス、夢の対決!!」と題した。
そう、コンビだった2匹が敵同士になったのだ。
・・・それが間違いだった。
勝負の結果をめぐって紛糾、2匹の仲はすっかりこじれ、番組もこの騒ぎがもとで放送終了に追い込まれた。
そしてセトラはサリナスを嫌って転校。
世間から忘れられていたのだ。
【サリナス】「・・・そうだ、セトラに一つ言い忘れた事があるんだけど。」
【セトラ】「・・・?
わざわざみんなが囲む中で話す事かい?」
【サリナス】「名番組『あのチャオは今?』の出演依頼が来てるらしいけど、どうする?」
【セトラ】「・・・悪くはないね。」
【サリナス】「オッケー。名コンビ復活、っと。」
【セトラ】「良き相方として・・・そして、良きライバルとして、な。」
教室の騒ぎは収まる事を知らなかった。
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後編へ続くっ!