~第5話・前編~
スパイラル 第5話 歪み始めた幻
僕は窓から夕暮れを眺めていた。
休憩中である。
【ルシス】「テスト、か・・・懐かしい響きだな・・・。」
【リサラ】「な~に黄昏(たそがれ)てんのよ。」
【ルシス】「リサラ・・・いつの間に?」
【リサラ】「来ちゃダメだった?」
【ルシス】「いや・・・そうじゃないけど・・・」
【リサラ】「会社で友達とケンカしてね。こっちもちょうど黄昏たい気分。
ルシスは作家だからさあ、よくこんな事してるんだろうなーって訪ねたらジャスト、って訳。」
リサラは普通の会社でOLをやっている。
異端な性格の僕とよく釣り合うなあ、と思っているが、恋愛ってそんなもんなのかも知れない。
お互いに足りない物を求める、ってね。
【ルシス】「んじゃ、続き書くかな。」
【リサラ】「晩飯作ってあげるね。」
【ルシス】「へ?」
おいおい、ちょっと待った。
彼女兼アシスタントとは言え、今までこんな事は無かったぞ。
【リサラ】「心配しないで。あたしの寂し紛れだから。」
【ルシス】「あ、そう。んじゃ、頼むね。」
さて、続きを書くとするか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
テストは一日で終わる。
順番に国語、数学、社会、理科、昼食を挟んで英語の5時間。
普段より少し早めに帰れるので、逆に嬉しい、なんて人もいるが、テスト中はそれどころではない。
昼食の時、いつもの3匹が集まった。
残すは英語だけとなり、気が楽になったのか、ゲームの話になった。
【クライト】「どこまで進んだ?」
【ミリル】「3匹目が仲間になったところでセーブ。」
【アレスト】「俺も。なんか無駄にムービー長いような・・・」
【クライト】「ま、それがウリだからねぇ・・・」
【セトラ】「・・・実際、このゲームのディスクの半分はムービーだってさ。
ムービーが増えた最近のRPGでもこの量は異例だよ。」
【ミリル】「セトラ、聞いてたのか・・・。」
【セトラ】「だから大人には非常にウケてるんだけど、ゲーム自体を楽しむ子供から見たらあんまり面白くないんだとか。
もっとも、それでいてゲーム性は失っていないから、子供にも売れてるんだけど。」
【アレスト】「・・そうだ、この問題どうなるんだったっけ?」
おっと、テストの話に戻ったようだ。
セトラが来たのを絶好のチャンスと捉えたアレストの勝ち、といったところだろう。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【リサラ】「出来たよ~。」
【ルシス】「オッケー。今行くね。」
そういえば、僕の家で2匹で食事をするのも初めてだな・・・。
そりゃ、レストランで、ってのはあったけど。
【リサラ】「ねえねえ、ところでさー・・・」
【ルシス】「?」
【リサラ】「何で小説の世界なんか存在するのよ?
誰かが作り上げなきゃ無理でしょ?」
【ルシス】「確かに・・・
現在の科学技術では異次元の世界を創りあげるなんて到底不可能だ。
となると、やはり・・・」
【リサラ】「『時空の支配者』?」
【ルシス】「・・・多分な。言い換えれば、『神』といったところかな。」
【リサラ】「でもさあ、それって凄いじゃん。」
【ルシス】「何が?」
【リサラ】「だってさあ、他にこういう体験をした、という報告なんてないじゃない?
それってさあ、ひょっとしてあたし達って『神に選ばれた』って事じゃない?」
【ルシス】「・・・要は捉えよう、って事か・・・。」
【リサラ】「そうそう、プラス思考でいかなきゃ。
作家とかってマイナスに考える人が多いしね。」
【ルシス】「・・・いや、プラスに考えてたら最初っから作家になってないと思うんだよね。」
【リサラ】「そんなもんなの?」
【ルシス】「まあね。」
・・・夜、1匹で考えた。
『プラス思考』だの『神に選ばれた』だの・・・・リサラの言葉が頭を巡る。
珍しく、今夜は小説の続きを書かずに眠ってしまった。
いろいろ考えすぎて、小説の事を忘れてしまっていたのであろう。
ちなみに、リサラの料理の味は・・・・おっと、ここで言うものではないか。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
後編へ続くっ!