鍵の掛かった書庫 -numbering

「鍵を開ける日は、いつか必ず来る。その時まで、大切にしまっておいて」

 彼女はそう言っていた。今では懐かしい言葉だ。
 自分だけの書庫の中に閉まっておいた、大切な物。私は今、それを取り出したような気分に浸っている。
 忘れる事のできない充実した日々。そして、その手で掴み取ってしまった負の遺産。


 今の世界が平和なのか、否か。今の私には、もうわからない。この世界がどう変わっていこうとも、または変化を嫌おうとも。
 何が正しいんだろうか。何が間違ってるんだろうか。誰も教えてくれないし、誰も決めてくれない。
 だから、開いた。いつだって私は弱くて、自分では何も決められず、流されるままに生きてきた。

「過去を見つめろ」

 あの時の私は、一体何を求めて走っていたのか。今こそ振り返る時が来た。
 忘れないうちに。
 見失わないうちに。
 正しかったか。
 間違ってたか。


 さあ、読み返そう。
 300円でも売れやしない、私の小説を。

このページについて
掲載日
2010年6月12日
ページ番号
2 / 18
この作品について
タイトル
小説事務所 「can't代 Therefore壊」
作者
冬木野(冬きゅん,カズ,ソニカズ)
初回掲載
2010年6月12日
最終掲載
2010年10月15日
連載期間
約4ヵ月6日