鍵の掛かった書庫 -numbering
    「鍵を開ける日は、いつか必ず来る。その時まで、大切にしまっておいて」
 彼女はそう言っていた。今では懐かしい言葉だ。
 自分だけの書庫の中に閉まっておいた、大切な物。私は今、それを取り出したような気分に浸っている。
 忘れる事のできない充実した日々。そして、その手で掴み取ってしまった負の遺産。
 今の世界が平和なのか、否か。今の私には、もうわからない。この世界がどう変わっていこうとも、または変化を嫌おうとも。
 何が正しいんだろうか。何が間違ってるんだろうか。誰も教えてくれないし、誰も決めてくれない。
 だから、開いた。いつだって私は弱くて、自分では何も決められず、流されるままに生きてきた。
「過去を見つめろ」
 あの時の私は、一体何を求めて走っていたのか。今こそ振り返る時が来た。
 忘れないうちに。
 見失わないうちに。
 正しかったか。
 間違ってたか。
 さあ、読み返そう。
 300円でも売れやしない、私の小説を。

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