5つ目の話 明日、世界が変わる日
─召集状─ 5つ目の話 明日、世界が変わる日
もう、あれから、何年たったでしょう?
3年ぐらい?いや、もっとかもしれません。
でも、まぁ、そのくらいでしょう。
初めて戦場に立って、戦ってから。
それだけたって、やっとふたりは、10歳になったのです。
もうそれぐらいになれば、覚えの早いチャオ達は、軽く戦闘機も扱えるようになっていました。
もちろん、あのふたりも。
泥沼化した戦争が続くにつれ、「誤爆」の名の下、民間人への被害も出るようになっていました。
そして、ついに国連も潰され、一部の国に対しては空襲も行われるようになっていたのです。
でも、ジパングやチェリー等の大国には、まだ空襲は及んでいませんでした。
植民地を盾にしたのです。
陽斗は、戦闘機の操縦桿を握って、爆弾を積んでとある国の町へと向かっていました。
後には羽月、そして前にはあのライトカオス─フィラも飛んでいます。
他にも、ざっと、30機ぐらいは飛んでいるでしょうか。
ここは、たしかチェリーの植民地。
砂漠にかこまれた、小さな国。
延々と続く砂の起伏、その上を日に照らされて、真昼の襲撃。
町が見えてきました。
あそこで、この爆弾を使って、火の海を作る─考えただけで、ぞっとします。
何度も空襲しにいったことがあるので、陽斗の脳裏には余計に鮮明にその光景が広がりました。
「今日は、何人死んだんだろうね・・・・」
急に隣からそんな声が聞こえてきて、陽斗はぎょっとして振り向きました。羽月でした。
「羽月・・・」
陽斗がそういったのが、聞こえたのやら聞こえてないのやら、羽月は続けます。
「もともと、チャオなんて、戦うものじゃないでしょう?カラテやレースはともかく、空襲なんて。」
一息ついて、
「全部、人間の勝手・・・世界中が、ナミさんみたいな人間だけなわけじゃないわ」
と、つけたしました。
「そりゃあ、そうだけど・・・もう、そんなこと考えるのはよそうよ。身がもたないよ」
陽斗も、半分ため息を吐くような口調で言います。
「最近、ポヨをハートになんかして無いもんね─転生できるかどうかも、定かじゃない」
フィラも会話に加わりました。
羽月は、そういわれると、うつむいて、ぼそりとこういいます。
「明日、また空襲がある─もう、あたし、やだな。」
「誰だって嫌さ。でも、どうしようも─」
「ねぇ、陽斗・・・あした、戦闘機に乗って、そのまま帰ろう」
陽斗もフィラも、一瞬耳を疑いました。
でも、羽月は、姿勢一つ変えずに、つづけます。
「フィラだって、もと居た場所はあるでしょう。ね、行こうよ」
「でも、そんなの─無理に決まってるじゃないか。撃ち落されちゃうだろうし、ここからナミさんのところまで、どれぐらいあると思って─」
「分かってる。無謀よ。だけど─これが戦争への反抗の印になる」
羽月は、顔を上げて、言いました。
「もう、あたし、空襲なんて、したくない─チャオとして」
夜空だけは、いつもと変わらず、暗闇をバックに星を輝かせています。
地上が、どんなことになっていても─