4つ目の話 光はどこかへ吸い込まれるかのごとく

─召集状─ 4つ目の話 光はどこかへ吸い込まれるかのごとく

 数日がたちました。食べたり寝たりちょっと出かけたりして、数日がたちました。
奈美は、とりあえずメールチェックしてみます。
思わず安堵感が体を流れました─彼から、メールが来ています。
件名─「チェリーでは・・・・」─をクリックします。
文字が、ずらっと並びました。

─お久しぶりだね。
 研究は、順調だよ。ウチのチャオたちも、元気にしてる。
 そうだなぁ、詳しいことは分からないけれど、
 やっぱりチェリーでは訓練期間も短いらしいね。
 ジパングは兵士がもっと少ないから、
 それより早いと思う。
 そっちの街で、だれか出兵したの?
 それじゃあ、またね。─

やっぱり忙しいのでしょうか、ちょっと短めなメールでした。
でも、なんだか、とても痛いところを突かれたような気がします。
─そっちの街で、だれか出兵したの?─
街どころではありません。自分のチャオが出兵したのです。
もし言ったら、チャオブリーダーとして、彼、絶対怒るでしょう。
でも、奈美にしてみれば、チャオだけで暮らしているソルトとレイナは出兵しても、
陽斗と羽月が大丈夫ならそれでいい、なんて、言えないのです。

今日も二人は帰ってきました。
いつもと同じように、夕飯の支度をしているときです。
だれかが、奈美の足を小突きます。
あんまりにも急だったので、奈美はあわてて包丁を落としてしまいそうになりました。
「奈美さん、聞いてました?」
声の主は、レイナでした。ソルトも傍に居ます。
「えっ─何か、呼んでたの?」
「えっ、ハイ・・・気がつかなかったみたいだから」
何でこんなに傍で呼んでいたのに気がつかなかったんだろう─何か、考えことでも、してたかな。
「ゴメン─どうしたの?」
「これこれ─新聞」
いつのまにかソルトが新聞を手にして、レイナがその手をつかんでふっていました。
「ココ、ここですよ~!!」
「えっと─」
奈美は新聞を受け取って、二人の指差す記事の見出しを見つけます。
「<徴兵チャオ、早くも全員戦場へ>─!?」

もういちど、目をこすって、見出しを凝視します。文字は変わっていません。
「まだ─徴兵令が施行されて、1ヶ月ぐらいしかたっていないのに・・・それに─」
そういうソルトに続き、
「ふたりは、まだ4日目だよ・・・・」
とレイナがつぶやきます。
「嘘でしょ─有り得ない・・・こんなの・・・・」



「・・・もう、コレを使うことになるなんて、思ってなかったな・・・」
あっちこっちで、ガチャガチャと鉄の音が響きます。
どこかの建物で、チャオ達は、いったん、戦場へと向かう車から下ろされます。
全員に与えられたレーザー銃。それと、充電器。
陽斗と羽月も、教えられたとおりに手を動かして、充電しようとしていました。
「えっと、このコードをどこかにつなげて・・・・」
「ちがうわよぉ、そっちじゃなくて・・・・あれっ、入らない・・・」
「手伝おうか?」
充電に悪戦苦闘している二人の頭上から、声がしました。
振り向いてみると、光るポヨに、口の無い、ライトカオスが居たのです。
「君は・・・?」
「やってあげる」
羽月はレーザー銃と充電器を手渡します。それにつづいて、陽斗も。
すると、彼の手はてきぱきと動き、カチャカチャ音を立てながら、充電器のなにかのスイッチを入れ、
あっというまに二台とも、充電を終わらせてしまいました。
「あっ・・・・ありがとう。」
彼は無言で、ふたりにレーザー銃と充電器を返します。
「じゃあ、また」
言葉少なに彼はそういうと、どこかに行ってしまいました。
ふたりはあの光るポヨを探そうとしましたが、人ごみで見えなくなってしまいます。
ライトカオスなのに、それにしてはちょっと小さな体つきをしていました。

誰だったんだろう─そんな問いの答えは、車に乗り込んで、戦場についても、戻ってきませんでした。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第153号
ページ番号
6 / 9
この作品について
タイトル
─召集状─
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第148号
最終掲載
週刊チャオ第157号
連載期間
約2ヵ月5日