2つ目の話 偽りの出兵 つづき。
奈美は、呆気にとられていました。
状況が、さっぱり理解できません。
奈美は、まだなにがどうなっているのか分からないうちに、ベットのそばのランプが乗ったテーブルに、小さな封筒がおいてあるのに気がつきました。
この前、羽月が奈美にねだってかってもらった、あのレターセットのものでした。
奈美は息を落ち着かせて、テーブルのほうに歩み寄りました。知らない間に、呼吸まで荒れていたのです。
奈美は、封筒を手にとって、そっと開けました─
ナミさんへ─
きょうわ、ふたりがしゅつぺいするひです。
ぼくたち、あのふたりにわとてもやさしくしてもらって、なのになにもしてあげられないなんて、いやでした。
だから、ふたりにれースのたいかいでがんばてもらえるように、
かわりにぼくらがしゅっぺいしようとおもいます。
だから、ふたりのめざましとけいのスイッチおきって、
こっそりじゆんびしていました。
スキるも、まだぼくらは1000ぐらいしかなかたけれど、
ふたりにわわるいけれど、ふたりのおうちのきのみやカオスドらイぶ、それにしょうどうぶつで、
2500ぐらいまではあげました。
あのふたりにはゆめがあるから、そのゆめがかなうように、ぼくらがかわりにいくんです。
だから、ナミさんわ、かなしまなくてもいいんです。
それに、ぼくらぜったいもどってきます。
それまでのあいだ、さんにんでまつていてください。
ようと はづき より
まだ慣れていないひらがなと、覚えはじめのカタカナ、それにところどころ間違っているかなづかい。
間違いなく、あの子達のものでした。
頭の中が真っ白です。
それに、いつの間にか、涙も、蘇っていました。
「ばか・・・」
奈美は、不意に、ひとりでつぶやいていました。
「誰も出兵なんてしなくていいのよ・・・」
涙が滴る音だけが、部屋に響きます。
「彼方達には、ホントは関係ないのに・・・なのに、勝手に人間が決めて、彼方達に迷惑をかけてるだけなの・・・それなのに、どうして彼方達、チャオが戦わなくちゃいけないのよ・・・もともと、チャオは、平和を愛する、水の精なんでしょう・・・」
今、二匹は、いままで一度も自分たちだけで乗ったことの無い電車にゆられて、これからのことを怖がって、不安になっているのでしょうか。
ソルトとレイナが起きて、時計を見て、減っているカオスドライブや木の実、小動物たちを見たら、何が起こったと思うのでしょう?
起こしに行こう─今起こったことを、この手紙を持って、伝えに行かなくちゃ─
だって、あの二人の分だけ、がんばってもらわなきゃ・・・
家の中は、静まり返っていました。もちろん、奈美の部屋も。
奈美は、ローテーブルの上の写真を手にとって、ひざ立ちして固まっています─
「ねぇ、風哉、私、また自分のチャオと永遠に別れることになるなんて、嫌よ・・・─ねぇ、どうしたらいい?」
奈美は、自分の部屋の写真の中で、ニコニコと笑っている、陽斗と羽月と同じぐらいの年のチャオを見つめて、ひとり、つぶやきました。