1つ目の話 ある、夕暮れの公園で つづき
「それじゃあ、陽斗、羽月、また明日、会おうね。」
女の子の方が、奈美の足元でわいわいじゃれている2匹のチャオに、手を振りながら言いました。
「もういっちゃうの?」と、陽斗。
「また、あそんでくれる?」と、羽月。
動きをピタリと止めて、そう口々に言う二匹に、
「うん、また来るよ。」
と、女の子が言うと、
めずらしく、二匹は素直に
「じゃあ、またね!」
と、手を振って、家のほうへ駆け出しました。
「あぁ、もう、待ってよぉ・・・あ、今日はありがとう。」
奈美も、ちょっと二匹に手を振って、小さな二匹を追いかけていきました。
夕暮れもさらに暮れたころ、一台のバイクの音が、さみしく町に響きます。
郵便局の配達員の手には、茶封筒が握られていました。
だれもいない町を、またバイクは戻っていきます。
あの二匹の家のポストは、されるがまま、茶封筒を飲み込んでいました。
小さな二匹とあんな約束をしたなんて、ポストには知る由もなかったんですから。
昨日、隣の町のチャオは、電車に乗って、どこか遠くへ行ってしまったそうです。
あの茶封筒を、かばんにつめて。