1つ目の話 ある、夕暮れの公園で

 いつの、どこの世界の話でしょうか。
そのどこかの世界のいつかの時代には、「チャオ」がいました。
平和を愛する、水の精。小さな生き物です。
その世界のある一つの生き物、「人間」は、チャオに慣れ親しんでいました。
姿かたちはちがうけれど、あんまりにも知能が人間に似ているものだから、よけいに愛着がわくのです。
いや、一部の人間とチャオの間では、別の生き物というより、もうすでに「友達」といった関係も築き上げられていました。
でも、チャオと人間は、やっぱり、決して同じ生き物ではありませんでした。
チャオより、人間のほうがずっと体も大きかったのです。
そうなると、自然に、上下の関係ができあがっていきました。また別の、一部の人間とチャオの間では。

そんな世界は戦火におびやかされていました。
「国際連協」が、武力の行使による解決を、各国に認めたのです。
しかし、「そうした理由」は多くの人々の反感を買いました。
強い国が正しい。弱い国は、間違っている。
だから、チャオをどのような立場におくかは、強い国をこの戦で決めて、
さっさと片付けてしまおう─

そう、いつか考え方の違う国々が対立したように、
また、チャオに関する考え方が違う国々が、対立し始めたのです。

国連からの武力による解決が許可される前から、条約を破って、各国で極秘裏に進められた、兵器の開発。
繰り返されるテロや極悪犯罪、気が狂う人々。
そして、そんな人間達に振り回されて、知らずとも不安な生活を強いられている、チャオたち─

でも、その戦争でだれが勝とうとも、チャオの立場はいつも人の下でした。

─召集状─ 1つめの話 ある、夕暮れの公園で

 「今日も、ありがとうね。キミらだって忙しいのに・・・」
少し前にかがみこんで、目の前に居る2匹チャオたちに、一人の人間が、にこやかに話しかけていました。

空にはオレンジ色のペンキがぶちまけられています。
公園は、オレンジ色にかがやいて、もう夕方だということを告げていました。

その人の足元には、目の前に居る2匹よりも3,4つほど幼い、また2匹のチャオが、その人の足にしがみついて、きゃあきゃあじゃれています。
この人、名前は、「奈美」なんていう、いかにもこの国、「ジパング」の人間らしくネーミングされていました。
「いいんですよ、ナミさんだって、忙しいでしょう?」
右に居るヒーローチャオの女の子が、愛想良く首をかしげて言いました。
確かに、奈美は忙しい身でした。
なんせ、まだ小さい(といっても、もう転生した分も足して7歳になりますけれど)チャオ2匹と一人暮らしですから、家事も仕事も、そしてチャオの面倒も、全部一人でこなさなくてはいけないのですから。
でも、よくよく考えれば、「人間なし」で、二匹だけで生活しているこの子たちだって、忙しいはずなのです。

「でも、キミらだって、大会も控えてるし・・・」
そう、なんだかんだいって、この二人は全てのスキルが3000を越しているという、チャオレースのプロなのです。
4年に一回開催される大会で、いつも優勝を目指していますけれど、
それがなかなかうまくいかないもので、世界大会まで行っても、予選で落ちてしまったりしました。
それでも、全国大会を勝ち進むことだけでも、とても名誉なことだったのです。
その地方大会が、あと3ヵ月後に控えていました。
「大丈夫。地方大会はシードで出なくてもいいから、だいぶ先です。それに、この子たちと遊んでるほうが、ボクの性に合って・・・」
男の子は語尾をどんどん小さくして言いましたが、それも言い終わらないうちに、
「何いってるのよ、そんなこといってたら、シードおろして貰うわよ!」
と、女の子が冗談っぽく相づちを打ちます。
「そ、そうだね、うん・・・」

このページについて
掲載号
週刊チャオ第148号
ページ番号
1 / 9
この作品について
タイトル
─召集状─
作者
ぺっく・ぴーす
初回掲載
週刊チャオ第148号
最終掲載
週刊チャオ第157号
連載期間
約2ヵ月5日