Re: 傷心

二人は丘の頂上で座っていた。
ちょうど夕日が消えていくところだった。

「あたし、このけしきをみるのがすきなんだーw」
「…そう。」
「あなたのなまえは?」
「…冬。」
「そうなの?あたしは『スーマ』っていうの!」

スーマはうれしそうに夕日を眺めていた。
彼女はこの夕日がきれいで、とても好きだった。

「ゆうひ、キレイだよね!」
「…そうかな。」

しかし、無論、感情がない冬に、
そんなキレイなんていう感情は、無かった。

「えぇ~?キレイじゃないの?…そう。
 でも、ぜったいキレイになるよ!
 あたしとさ、まいにち、みていれば、ぜったい!」
「…そう。」

「ねぇ、冬のこと、『冬きゅん』ってよんでもいい!?」
「…冬きゅん?」
「そう!冬きゅん!よろしくね!」
「…そう。」

冬は別に自分がなんと呼ばれようともかまわなかった。
どうせ、明日には、この街は、消える。
冬は一つのレシーバーを空に向けた。
そうして、明日には、殺戮が開始される。

と、その時、スーマがふと言った。

「ねぇ、あたしたちって、トモダチ!?」
「…ともだち?」
「そう!あたしと冬きゅんはトモダチ!約束して!」
「…分かった。」

どうせ、明日には、もう、…。
冬はそう思って「分かった」と言った。
…が、少しだけ、ほんの少しだけ、何か違ったような気がした。



それから、数日は何も無かった。
きっと、何か色々と事情があって遅れるのだろう。

そして、その日からは毎日スーマと夕日を見るのが、
習慣になっていた。

「キレイだねぇー。」
「…。」
「冬きゅんもきっと、キレイに、みえるときがくるよ!」
「…そう。」

いつもはここで会話が終了した。
が、今日はさらにスーマの口が開かれた。

「あたしのおかあさんとおとおさんは…ころされた。
 わるいひとがやってきて、あたしだけがたすかった…」
「…。」
「でも…でも、冬きゅんはわるいひとじゃないよね!
 あたし、しんじているの!冬きゅんはいい人だって!
 あたしのいちばんのともだちだって!」
「…。」



後日、冬きゅんは朝の村に入っていった。
しかし、その日は彼だけじゃなかった。
ろっどと、あと、DXという殺戮者もいた。

「冬、俺とDXはとにかく殺していく、
 おまえは、その人間から魂を取りだし、
 俺たちに渡すんだ。
 それまでは絶対に、魂に触れるな!いいな。」
「あぁ。」

ろっどとDXは素早く、村に入った。
刹那、爆音がとどろき、一斉に村人が出てくる。
あわてふためく彼らに、ろっど達は容赦なかった。

冬はそれを呆然と見ていたが、
その時、誰かが彼の服を掴んだ。

泣き顔のスーマだった。

「冬きゅんのうらぎりもの!さいあく!さいてい!
 なんで!?なんでこんなことをするの!?」

スーマは冬を叩く。
冬は、スーマに触れようとした…その時、
爆音と共に、スーマは吹き飛ばされた。

「…冬、そいつは始末した。魂を吸い出せ。」
「…。」

冬はスーマに近づく。
冬はスーマに手をかざした。
すると、そこから、青い光が取り出された。

「スーマ…。」

冬は初めて彼女の名前を呼んだ。



『あたし、このけしきをみるのがすきなんだーw』



『冬きゅんもきっと、キレイに、みえるときがくるよ!』



『そう!あたしと冬きゅんはトモダチ!約束して!』



「…あぁ、約束するさ、スーマ…。」

彼は触れてはいけないと言うことをしりつつ、
そっと、それに手を触れた。



と、DXが冬に近づいてきた。

「よし、おい!魂は吸い出したか!?」

「えぇ?うん!吸い出したよ!」
「…あれ、おまえ、口調が変わっていないか?
 もしかして…おまえ…」
「ちがうよ!僕はこうやって人を欺く技術があるのさ!」
「そんなモノ…某がくれたのか?」
「うん♪」

冬はニンマリと笑う。
DXは気味が悪いと思いつつ、その場をさった。



その日、冬は丘に登って夕日を見ていた。

「きれいだなぁー。僕にもやっとキレイだって分かったよ。
 …二人で見れれば良かったのにね。
 二人の思い出があれば良かったのにね…。」

冬はうつむいていた。
が、すぐに顔を上げた。

「冬きゅん…。」



『冬きゅん!』



「…そうだよね。スーマ。
 忘れないよ。例え僕が一人でも、
 忘れない…。」



冬きゅんっていう名前



トモダチとの、大切な思い出の…



fin

このページについて
掲載号
週刊チャオ第279号
ページ番号
2 / 2
この作品について
タイトル
傷心
作者
それがし(某,緑茶オ,りょーちゃ)
初回掲載
週刊チャオ第279号