№9

「誰だよ?」
誰に言ったか自分でもわからないようなツッコミをして、すぐ近くの柱に身を潜めた。
そのシャドウチャオは周囲を手短に、だが奥深く確認してから背負っていたリュックのような物の側部のポケットから何かを取り出した。恐らく無線機だろう。
それを軽く操作している。周波数の指定らしき行動を終えて、喋りだした。
「小隊長。こちらシャドウ。確認は済んだが、例の一派の存在を確認できない。OVER」
シャドウ? 私の記憶力がそこらへんを動き回っているネズミよりも下等じゃなければ、確か黒いハリネズミだったハズだ。ソニックにそっくりの。
間違ってもチャオじゃないハズだったのだがと改めて考えていると、通信相手の声が漏れ出した。声が小さいが、聞き逃す訳にはいかない。
『そうか。だが、その一派がいなくとも、事務所の連中の確認はできただけで十分だろう。捜索を続けろ。見つけたらすぐに連絡するんだ。OUT』
たったそれっきりの無線会話を終えて、シャドウと名乗るチャオはリュックに無線機をしまいこんだ。と、次に少し妙な行動がみえた。
突如左手が無線機をしまい終えると、右手が腰のあたりに移動し、何かを取り出した。……拳銃だろうか?
そして突然チャオの手に見えない人差し指を引き金に入れ、銃を回し始めた。確かこういう行為をカンスピンというらしい。ガンプレイの一種である。
確かガンプレイというのは、サッカーボールでリフティングをするのを、ボールを銃に置き換えて手を使ってリフティングするかのようなテクニックだったと思う。ちょっと分かり辛いが。
そのガンプレイ云々の行為を行っていた。何をしているのやらと考えた矢先。



バン――


うーむ、いつのまにか私が隠れているボロい木製の柱の一部分が欠けている気がするのだが、気のせいだろうか? 木なだけに。
その理由を一から手順よく優しく解説してくれる人物がいてほしいと思ったのだが、やっぱりいらない。普通わかる。そして私は普通の思考回路はちゃんと持ち合わせているつもりだ。
あのチャオが撃ったんだ。間違いない。間違ったら誰だって言うんだ。

「誰だ?」
恐らく発砲したであろう張本人のシャドウチャオが、いつの間にかこちらの方角に向けて銃を構えた体制をしていた。
さぁて、ここから私はどのような行動に出ればいいだろうね?

1. 大人しく出て行く。
2. その場に立てこもる。
3. 身分だけ答え、それ以外の行動は起こさない。
4. 逃げる発動。

何だか一番下に私の気に入らない選択肢が入っているようだが、無視しておこう。
一応私にもプライドというものがある。まさに男じゃないかと言われるような物を持ち合わせているが、仕方ないじゃないか。という訳で一つ目は却下願いたい。
が、別にプライド重視という訳でもない。死ぬ気なんてさらさらない。だから二つ目も却下。
こうやって排除法を使うと良い結果であろうが悪い結果であろうが、踊りだしそうな結果だか憎たらしい結果だかが残るのだが、リスクが最小限に収まるというという利点がある。
「事務所の関連者だ、って言ったらどうしますか?」
あえて名前を出すつもりは無い。身分というのはそういうものだ。
「証拠は?」
……面倒な答えを要求してこないでほしいのに。泣くぞ。
「所長は酒の代わりにコーラを飲む、とかは?」
苦笑を添えて答えてやった。さて、どうなるかな。
「……ふむ」
え、いいの? いいの? 
「最近、小説事務所に男の新入所員が1人入ったという情報を聞いたんだがな」
「女ですっ!!」
思わず柱から一歩踏み出して大声で答えた。なんでみんな、わざわざ私を男扱いするんだ。
「冗談だ。そこまで間違った情報を扱ったりはしない」
それはそれでムカつく。わざわざ怒らせないでもらいたい。
「それはすまなかったな。俺は……って、名前ならさっき盗み聞きしたな?」
鼻で笑ってそう言い放った。私も鼻で笑い返す。
「わざわざ進化形態の名前をそのまま付けられるなんて話はあまり聞きませんけどね」
「コードネームだ」
……なんだ、そういう事か。
「所長はどこだか教えてもらいたいんだが」
「知りません」
その言葉に思わずシャドウ氏がポヨを疑問符に変える。
「先程まで閉じ込められていた身で、状況は飲み込んでいません」
わざとらしく手をひらつかせて答えると、シャドウは不意に複雑な顔を作り出した。
「殺されたのではなくて?」
は?
「奴等なら容易に殺しにかかるハズなのだが……」
おもわず疑問符だ。2人揃って。
どうやらあっちは殺さない理由について悩んでいるらしいが、私は逆に殺す理由がわからない。
と、シャドウが何を思ったか、
「お前、何か特技は?」
と聞かれた。どんな質問だそれは。
「何もありません」
更に複雑な顔で、
「プロフィールは?」
何を聞きたいんだ。
「至極、普通だと思います」
それを聞いてしばらく考え込む素振りを見せていたが、突如としてポヨが感嘆符へと変化した。

このページについて
掲載号
週刊チャオ第277号
ページ番号
10 / 17
この作品について
タイトル
小説事務所 「山荘の疑惑狂想曲」
作者
冬木野(冬きゅん,カズ,ソニカズ)
初回掲載
週刊チャオ第266号
最終掲載
週刊チャオ第287号
連載期間
約4ヵ月28日