~月編~第四十六話 二人の勇姿
イレンたちはカオスクリスタルを(ムーンを)探して、大陸へと移動する。
そこのだだっ広い草原に、小屋があったが、誰もいない。
そこで、ロードが見知らぬチャオを発見した。
イレンたちが駆けつけると・・・・・・
リトル「シャドー!」
シャドー「リトルか。手を出すな。これは僕とこのフェイクとの戦いでな。」
そう。シャドーというピュアのシャドウチャオと対峙している者。
紫色の光沢、三本の後ろ髪、背に抱えている大きな包み。
・ ・・・・ムーンだ。
イレン「ムーンさん!?」
ムーン「お前らか。僕を助けたという者は。しかしそれとは別。こいつの持っているカオスクリスタルを手にするまではな。」
シャドー「どうやら僕の持つ、白銀のカオスクリスタルが目的か。さがっていろ。」
言われたとおり、イレンたちは戦いの邪魔にならないところにいる。
イレンにしてみれば、離れすぎだ。
シャドー「どういうわけかは知らないが、この僕と対決すること、後悔させてやろう。」
ムーン「僕に勝つつもりか。ならばその意思、曲げてやろう。」
ロード「似たもの同士ですね。」
シャドーは手に光を宿らせると、それを放つ。
しかし、ムーンは片腕でそれを止め、消す。
シャドー「なぜそこまで邪念を持っている?君は他の星で善の行為を重ねてきたじゃないか。」
ムーン「勘違いするな。僕は僕の存在を証明するまでにやった。貴様のごとく、世界を救う等と言う意味ではない。」
イレン「・・・・・・どうして?前はそんなではなかったでしょう?」
悲しさを抑えながら、イレンは叫ぶ。
苦笑しながら、ムーンは再び口を開く。
ムーン「僕に「記憶」なんてものはない。あるのは奴への復讐心のみだ!」
シャドー「(速い!)」
ムーンは後ろの包みから変わった刀を取る。
それは、イレンの持っている大剣、ミッドナイト・・・ムーンの刀に似ていた。
振りかぶり、振り下ろす。
ムーン「力不足だ。」
シャドー「君もだな。なぜ僕のようなものを相手にするのに本気を出さない?」
ムーン「・・・・・・・・・・・・・・」
ロード「まさか・・・・!」
なにかに気づいて、突拍子にロードは口を開く。
リトル「どうした?」
ロード「彼、ムーンさんは近くの星・・おそらくイレンさんと同じ星で善行為を重ねて来たのですよね。ならなぜ今、復讐の念に捉われているか?それは・・・・・」
イレン「過去の記憶が書き換えられているか・・・・あるいは全く消えているか・・・」
ロード「それかその「奴」というものに復讐心が絶えないかでしょう。ということは、真の力は出せません。まさにムーンさんは・・・闇です。」
その言葉から、ムーンは妙に焦っているように見えた。
自分の感覚がおかしくなってしまったのだろうか?
シャドー「はっ!」
刀を押し返し、懐から何かを取り出す。
それは白銀に輝く、宝石だった。
上に掲げると、シャドーの体は輝き始める。
ムーン「救う力・・・・カオスクリスタル、封印石に封じられた唯一の光。」
シャドー「行くぞ!」
シャドーは先ほどとは違った。
身体は銀色・・・で、赤いラインが輝いて見える。
動きもすばやく、ムーンを翻弄していた。
ムーン「アルティメット―」
シャドー「カオス・クラッシュ!」
細長い光の刃が、ムーンを四方八方から攻め、吹き飛ばす。
ムーンは苦しいというより、なにかを見つけたというような表情だ。
ムーン「フッ・・・・・ダークネス・グランドクロス」
イレン「危ない―」
シャドー「カオス・ブレイク!」
闇の十字架に対し、シャドーは光の衝撃波を手に纏わせ、闇を受け止めた。
しかし、闇の力によってシャドーの身体はどす黒い色に覆われていく。
リトル「シャドー!もうやめろ!」
シャドー「僕は究極の「六の英雄」だ!貴様の・・闇に負けるはずはない!」
ムーン「遅い」
闇の十字架を止めているシャドーを、何かが貫いた。
光は消え去り、シャドーはもとの姿に戻る。
ロード「一体何が・・・・・・・・・・?」
リトル「シャドー!!!」
ムーン「カオスクリスタルは頂いていく。これで僕の力は完全となる。」
ムーンはゆっくりとシャドーに近づいていく。
まるで―そう、まるで誰かに自分を止めてもらいたいかのように。
しかし、ムーンはカオスクリスタルに届くことは無かった。
リトル「さがれ!僕が相手だ!」
ムーン「力が開花しているこいつでさえ、勝てなかったんだ。君では遊ぶ相手にもならない。」
イレン「僕が行きます。」
リトルの前に、イレンが堂々と立つ。
その目には「決心」が秘められているように見えた。
続けて、イレンは言う。
イレン「ムーンさん、僕が貴方を救います。」
ムーン「面白い。封印されし三十の悪魔の中心に位置す、「五狼神」。その一角と戦うことになろうとはな。」
リトル「イレン・・・・・・」
リトルは邪魔にならないように、シャドーを運び出す。
岩陰に隠れると、ムーンが言った。
ムーン「久しぶりに本気になれそうな相手だ。」
イレン「僕は負けません。貴方を救う為にも。」
ムーン「いいだろう!」
続く