第12話:Open Your Heart(後編)

銃声が響き、辺りは硝煙に包まれる。
しかし、そんなものは今のサイオンには通用しない。
サイオンは逆に立ちこめる硝煙を煙幕代わりに、人間達の背後に回り込む。
そして、自分の思い通りに変形できる腕を使い、遠距離からパンチを仕掛ける。

普通のチャオならこんな戦法は取らない。
どんなに頭が良くとも、正面突撃くらいしかしないだろう。
これも『CHAOS』の知性が宿ったことによるものだろうか。

・・・・・・・・・・

十数分にも及ぶ決闘の末、人間達の手持ちの銃弾が無くなった。
こうなると人間達はもはや抵抗できず、這々の体で逃げ帰ることとなった。

サイオンは最後に地面から水分を吸収し、水鉄砲のように発射した。
人間達には当たらなかったものの、それは人間達の乗ってきた船に命中した。
もとは豪華なモーターボートだったのだが、運転席が吹っ飛んでしまった。

人間達はその無様な船に乗って逃げ帰った。


「今だ! 結界を再構築するぞ!」


人間が島を離れたのを見計らってアポロが他の2匹のカオスチャオに向かって叫んだ。
その様子を見たサイオンは安心したのか、身体の力が一気に抜けて意識を失ってしまった。

・・・・・・・・・・

「………ん……………?」


サイオンは目を覚ました。また暗闇だった。
しかし、それは先程の暗闇とは違った。頭上に星が瞬いていたのだから。
そして、サイオンが辺りを見回すと、傍らにアポロ達が座っていた。


「びっくりしたぜ! まさかサイオンにあんな力があったなんて。」

「サイオンが来なかったら私たち、きっと死んでいたわ。」

「あのとき、君の身に一体何があったんだ?」


彼らは口々に言った。そしてサイオンは自分が倒れている間にあったことを話した。


「『CHAOS』………? 君に力を貸したのは僕らの『神』じゃないか。」

「そうだったのか……あの『CHAOS』がアポロ達の『神』だったのか。」


そう言ったサイオンは、アポロ達の背後に人影を見つけた。
それは、あの暗闇の中で見た『神』……『CHAOS』であった。
サイオンが自分を見たのに気づいたのか、『CHAOS』は振り向き、立ち去ろうとした。


「過去に何があっても、俺を助けてくれたことには変わりはない。……ありがとう。」


サイオンはそう呟いた。『CHAOS』は安心したように夜の闇に消えていった。

……その夜、サイオンはアポロの住む草原に泊まった。
結界は3匹が仲直りしたことで回復した。
そして、明日は遂にチャオの森まで案内してもらえることとなった。
もう何も心配いらない。

サイオンは何日ぶりかの安眠を堪能していた……。

<エピローグに続く>

このページについて
掲載号
週刊チャオ第46号
ページ番号
16 / 18
この作品について
タイトル
Shangli-La ~楽園を目指して~
作者
NORIMARO
初回掲載
週刊チャオ第31号
最終掲載
週刊チャオ第47号
連載期間
約3ヵ月23日