第12話:Open Your Heart(中編)
「俺は……みんなを助けたい! 力を貸してくれ!!」
そう言ってサイオンは気配のする方に手を伸ばした。
すると、先程まで見えなかった姿がボンヤリと見えてきた。
その身体は水のように透き通っていた。身長は2mはあるだろか。
そしてそれはサイオンの方に手を伸ばして言った。
『分かった……束の間であるが、力を……皆を護る力を……君に貸そう。』
サイオンは差し出された大きな手を握りしめた。
「自己紹介がまだだったな……俺の名はサイオン。」
『私の名はCHAOS。チャオを護る存在……』
目映い光と共に、サイオンは自分が現実に引き戻されるのを感じた。
・・・・・・・・・・
「・・・・!」
サイオンは目を覚ました。そして、地面に横たわっている自分に気が付いた。
「あれは………夢だったのか……?」
しかし、サイオンはすぐに先程のことが夢でないことに気づいた。
銃で撃たれたはずの傷の痛みが癒され、傷口も塞がっていた。
そして、身体に力がみなぎってきた。……そして心なしか頭も良くなった気がした。
今なら何でもできそうな気がした………。
「くそっ! チャオのくせに人間に刃向かうんじゃねぇ!」
人間の声が聞こえた。サイオンは草むらの隙間から銃を構えた人間の姿を見た。
銃口の先には振り払われて地面に倒れたアポロ達がいた。
………サイオンは無我夢中で飛び出した!
・・・・・・・・・・
「くそっ……駄目か……」
無様にも地面に尻餅を付いたハデスが諦めの言葉を言うと同時に、いくつもの銃声が森に響いた。
「チャオのくせに人間に刃向かうから…………っんな!?」
銃弾はアポロ達に届いていなかった。
いや、アポロ達の周りに水のような防護壁ができて、そこに弾が埋まっていたのだ。
そしてその壁は、1匹のチャオ……サイオンの腕に繋がっていたのだった。
そしてその壁は縮んでいき、サイオンの腕は元に戻った。
「サイオン!? 」
3人が同時に叫んだ。
普通なら3人と共に自分の無事を喜ぶところだが、サイオンはそれどころではなかった。
自分の身体がとんでも無いことになっていたのだから、驚くのも無理はない。
「(これが、皆を護る力―――?)」
サイオンはこの瞬間、「自分が皆を護る!」と決意した。
<第12話(後編)に続く>