第10話:チャオの島(後編)

「今日こそ決着をつけてやる!」


そう言ったのは道の左側に立つ黒いチャオ。
俗に言うダークカオスという種類のチャオである。


「そっちこそ、いい加減諦めなさいよ!」


言い返したのは道の右側に立つ、白いチャオ。
こちらはヒーローカオスという種類のチャオだ。
どうやらどちらともサイオンのことは全く目に入っていないようだ。


「あの~、すみません…。俺は関係ないようだから、この辺で………」


サイオンはその場を立ち去ろうとした。
しかしその時、左右のチャオがお互いに飛びかかった。


「行くぞ!」「行くわよ!」

「ちょっと待てぇぇぇ!」


サイオンはそう叫ぶが彼らに聞こえるはずがなかった。
彼は2匹のチャオの大喧嘩にモロに巻き込まれてしまった。

………数分後、サイオンは命からがら大喧嘩から脱出できた。
後ろを振り返ると、チャオ達はまだ喧嘩を続けている。
無理に止めに入れば、また喧嘩に巻き込まれかねない。
サイオンは仕方なく、その場を立ち去った。

更にしばらく歩くと、綺麗な川があった。先程探索したときには
歩き続けた上に、先程喧嘩に巻き込まれたサイオンの喉はカラカラであった。
サイオンはその川の水を飲んでみた。


「美味しい……。これほどの水が流れる川なら、沿岸にチャオの森があるかもしれない。」


サイオンは川に沿って上流に向かって歩き出した。

……2時間ほど歩いたであろうか、また喉が渇いたサイオンは川の水で喉を潤していた。


「本当に綺麗だよな……水面が鏡みたいだ。」


水面にはサイオンの顔が映っている。
しかし、俄にその像が歪むと、それはミズチャオの顔になった。
……いや、水面の像ではない。ミズチャオが水面に顔を出していたのだ。


「あんたが島の外から来たチャオかねぇ?」

「! ……何故知っている。」

「おめぇさんを連れて来てくれと、頼まれただよ。
 まあ、とりあえず俺に付いて来ぃや。なぁに、悪いようにはしねぇ。」


そう言うとミズチャオは、おもむろにサイオンの手を掴んだ。


「川の中に近道があるんだ。行くぞ!」


ミズチャオはいきなり水に潜った。……サイオンの手を握ったまま。
勿論サイオンは息を止めるまもなく水の中に引きずり込まれた。

そしてミズチャオとサイオンは川の底にある洞窟の中に消えていった。

<第11話に続く>

このページについて
掲載号
週刊チャオ第41号
ページ番号
11 / 18
この作品について
タイトル
Shangli-La ~楽園を目指して~
作者
NORIMARO
初回掲載
週刊チャオ第31号
最終掲載
週刊チャオ第47号
連載期間
約3ヵ月23日