五
神が放ったカオス・バーストをカオスィヴは掌で受け止め、空いている手から気弾を放つ。
神はそれを避けて、カオスィヴがいるところにカオス・イレイザーを放とうとする。だがカオスィヴはカオス・イレイザーの発生に合わせ無限魔法を置き、発生と同時に相殺した。
「わかっているだろう、元神」
カオスィヴは神を殴り、吹っ飛ばす。
地面スレスレを飛んでいく神を、その先に回り込んだカオスィヴが片手で受け止める。
「お前は私に勝てない」
カオスィヴは神を地面に叩きつける。地面から衝撃波が飛び出し、神を挟み込む。地衝撃。
その瞬間に、神はかつてと同じように、カオスィヴの腹にカオス・バーストを放つ。
カオスィヴはもう片方の手で、カオス・バーストを掴む。そして、神を掴んでいた手を放し、カオス・バーストをぶつける。また、神は吹っ飛ぶ。
神はすぐに起き上がるが、その目の前には白い光があった。カオスィヴのカオス・イレイザーだった。
神はカオス・シャドウで移動を試みるが、ことごとく移動先の目の前にはカオス・イレイザーがあるのだった。
「神の資格を得た私は、その力である無限魔法と消滅魔法を含むすべての力を500年もの間磨き続けてきた」
カオスィヴはカオス・イレイザーを変形させ、神を消滅魔法の檻で閉じ込める。
「この世界に生まれ落ちて、たかだが数年不完全な力を振りかざしていただけのお前とは訳が違う」
カオス・シャドウでカオスィヴの背後に現れた神が、魔力でできた槍を突く。が、それもカオスィヴの背中を守るカオス・イレイザーによって消滅する。カオスィヴはカオス・イレイザーによって生まれた空間の歪みを、すべて無限魔法で直した。
「そして、お前は無限魔法を使えない」
「私は無限魔法を使えない」
神はカオスィヴの言葉を繰り返した。
「シャドウ・ザ・スピードの生命こそが、私の無限魔法だからだ」
「……シャドウは孤独だった。神の座でただその役割を果たすだけの存在だった」
「あるとき、神の座に渦巻く混沌の中に一瞬の規則性が生まれ、自らが持つ無限魔法を生命に変えた」
「それと引換えに世界は神を失い、シャドウを手に入れた」
「生命とは制限だ。この体も、この意思も、実に不便だ。なぜシャドウ・ザ・スピードは自らを生み出した?」
「そこに目的はない。意思に始まり、意思に終わる。それだけだ」
「意思あるものは神に成りえない。貴様は私を越えるか?」
無数のカオスレイが神の上に現れる。
カオスィヴはマッスル・パワードであった頃を思っていた。当時の自分は、このカオスレイを見て何を感じていたのか?
自信か、恐怖か。それとも、何を考える余裕もなかったのか。
覚えていない。
カオスィヴは右手に気を集中し、気の球を浮かばせる。
カオスレイがカオスィヴに降り注ぐ。カオスィヴは球に気を送り続ける。気烈破滅弾。
気烈破滅弾はその大きさを増していき、すべてのカオスレイを飲み込む。それでもまだ、気烈破滅弾は大きくなっていく。
気烈破滅弾に照らされた仲間達の影が、長く伸びていく。カオスィヴと神の影が、光に飲まれていく。
「大丈夫だ」
俺は強い。