第三章 ~半透明~ 三十七話

 元ルークに戻ると、仲間たちはシャドウを迎えた。これで、本当に元の世界に戻って来られたのだ、とシャドウは思った。これが、当たり前であるはずなのだ。違う世界に一人だけ飛ばされるなどという体験は、二度としたくない。まるで、自分が死んでしまった、あるいは、自分以外のものがすべて死んでしまったような気分であった。今はどうだろう。自分や仲間たちやたくさんのチャオ、建物の壁や空や空気も動き、生きていると感じられる。生を感じるのに、あれほどの体験をしないと気づかないなんて、僕は感受性が弱いのかもしれない。
 それにしても、あの世界の感覚はどこかで何回か感じたことがある。その時は、意識せずに漠然と感じていただけだった。その正体はわからないが、何回か感じたということは、また感じる機会があるかもしれない。シャドウはもどかしさを感じながらもそう思うことにした。
 シャドウは自分の身にあったことを仲間たちに話し、また、仲間たちもシャドウに自分たちの体験を話した。
「機械の町が地面を突き破ってでてきただけでもそうですが、尋常じゃないことが起こっていますね」
 話を聞いていたポーンが言った。「しかし、町のはずれにあった機械によって生じたモノを破壊した、ということで、問題は軽減したのではないですかね。ついさっき、この町の機械が静かになりましたし」
「静かになった?」
 シャドウが聞き返す。
「ええ。機械が起動しているときって、何かしら音が出ていることが多いじゃないですか。テレビをつけているときの耳鳴りのような音みたいな。その音が先ほどまであったのですが、お二人が帰ってくる少し前になくなったのです」
 耳がいいナイツもその発言に同意した。他の仲間たちはきづかなかったらしい。ポーンとナイツだけがこのことに気づいたようだった。
 シャドウはポーンの観察力に感心しつつ、それでもここは危険である可能性が高いと判断し、ポーンを含む元ルークの町民たちを、一番近い町のシュシンに避難させることにした。
 シャドウたちは元ルークをもう一度、見回ることにした。シャドウは町民たちだけでシュシンに行くのは危険だと判断し、マッスルとラインが町民たちを護衛することを提案し、提案はすぐに決定された。
 シャドウたちは元ルークの入り口までいき、町民たちを見送った。町民たちが見えなくなってすぐ、シャドウたちの前にフェダカとフェダカの背中に乗ったフェトムが空から舞い降りてきた。
「久しぶりだな、ナイツ・フライズ」
 フェダカは威圧的に羽を広げる。かつて山でナイツが遭遇したときよりも、遥かに敵意が見られる。
「今回は様子見じゃないみたいだな」
 シャドウがフェダカの様子を見て言った。
「なんでまたこのタイミングに」
 ナイツがぽつりと言った。
「我々の邪魔になるような力がルークの近辺から発せられたからだ」
 ナイツのつぶやきにフェトムが答えた。「我々とは違う勢力がお前たちに圧力をかけた。リバル様はお前たちを我々の手で消すことを望んでいる。だから、他の勢力に手を出される前に、お前たちを消すのだ」
「色々と喋ってくれるんだな。僕たちを殺す気でいるからか?」
「そうだ」
 シャドウの問いかけに、フェトムは簡潔に答えた。フェトムはもう喋る気はないようで、戦闘態勢に入った。同じく、フェダカも戦闘態勢に入る。それとほぼ同時に、シャドウのカオスレイが二人を襲った。

このページについて
掲載日
2011年2月28日
ページ番号
228 / 231
この作品について
タイトル
シャドウの冒険3
作者
ダーク
初回掲載
週刊チャオ第158号
最終掲載
2012年9月6日
連載期間
約7年5ヵ月14日