第三章 ~半透明~ 三十五話
メルトとルークの間にある小さい山を登りきったマッスルたちは、ルークのほうを見渡した。ルークと思われる町は、まるでギルダンタウンのような機械の町であった。周りは自然環境が豊かであった。その中にある機械の町はマッスルたちに威圧感を覚えさせた。
ラインはその町を見て、驚いたような顔をする。
「俺が前に行ったときは、もっと小さな田舎町だった。アレがあの田舎町とは思えない。いくらなんでも変わりすぎだ」
「なんかあったんだろうな。早く行こうぜ」
マッスルはそういうと、早歩きで山を下り始めた。仲間たちはその後ろを同じペースで歩いた。
ルークまでの道は、舗装がされていなかった。しかし、荒れているわけではない。草が多く、自然が作り出した道となっている。また、地面も誰かが踏み荒らしたような跡もなく、歩いているだけでにおいまで感じられそうな色と形をしていた。実際に、マッスルたちは地面や草のにおいを感じていた。これほどまでに自然環境が残されているところをマッスルたちが見るのは、ヘルズ以来であった。
その道の先に見えるルークは、不自然であった。マッスルはルークの中でも一際大きな建物を見ながら歩いた。まるで違う世界のものみたいだ。だが、この世界にあるのだからこの世界のものなのだろう。
ルークの入り口は質素であった。小さな柱が二本あるだけで、その間を通ればもうそこはルークだ。その入り口以外からでも、ルークを囲っている小さな柵を乗り越えさえすれば入れる。しかし、わざわざ柵を乗り越える必要もないので、マッスルたちは入り口を通った。
しかし、マッスルたちがルークへ入り、一番後ろを歩いていたラルドがルークへ入るときにラルドは声をあげた。その声に気づいたマッスルたちがラルドのほうを見ると、ラルドは入り口の柱を凝視していた。どうしたのかと駆け寄ると、ラルドが見ているのは柱ではなく柱に貼ってある手紙であった。シャドウたちはルークにいないがルークで待っていてほしい、という旨がマッスルに宛てて書かれていた。
「なんで俺なんだろう」
マッスルが手紙の前に来るのを察知して、ラルドはその場所を譲った。マッスルは手紙をしばらく見続けていたが、特に何も考えていなかったのか、その場所から一歩下がって首をかしげた。
「マッスルはシャドウに信頼されてるんだよ」
ラルドがそう声をかける。マッスルは、うーん、とうなった。ラルドはもう一度声をかけようとするが、マッスルが次の言葉を発したのでやめた。
ラルドはマッスルのその言葉が聞き取れなかった。
「え、今なんていった?」
「俺、シャドウのところに行ってくる、って言った」とマッスルが答える。
ラルドが、そう、といって会話が終わった。
マッスルがシャドウのところに行くことに関して、他の仲間たちは反対しなかった。マッスルは、せっかく俺に宛てて書いてくれたのに悪いけどな、と言いながらルークの外に出た。
他の仲間たちは、静かなルークの中に多くのチャオの気配を感じ、そこへ向かった。