第三章 ~半透明~ 三十二話

 どれくらい走っただろう、と思った頃に、シャドウは足を止めた。もうシャドウたちを追ってくる何かの気配はない。周りを見ても、走り出す前の通路となんら変わりないように見える。お前は同じ場所を回っていたのだ、といわれても信じてしまいそうな気がした。ポーンはシャドウの腕から開放され、また同じくナイリアもナイツの腕から開放されて、ポーンが誰に向かって言っているのかわからないような方向を向いて、なんだったんだ、と言葉をこぼした。それに対してナイツが、何かが迫ってきていた、というと、呼吸のついでに出したというような声でポーンは返事をした。
 いつからいたのか、シャドウたちの前にダークハシリタイプハシリ二次進化のチャオが立っていた。
「繋がっているのだ」と言って彼は消えた。
 繋がっているのだ、とシャドウは思った。


 歩いているうちに上りの階段を見つけ、ふたたび屋上へと脱出したシャドウたちは、周りを見渡しながら今後の計画を考えていた。ナイツが、メカチャオ地点をすべて回ろう、といった。特に否定する理由がないのでメカチャオ地点をすべて回ることになったが、シャドウは何も期待していなかった。実際にメカチャオ地点にある建物はすべて同じような構造の建物であり、それらは二次元的な平坦さを持っていた。そこにシャドウたちが望むようなものはなかった。
 シャドウたちはなすべきことを失い、当てもなくルークを歩き回った。ルークは見事に機械の町と化しており、もはやルークと呼んで良いかどうかもわからない。そう考えてシャドウは、もともとルークは何をもってルークとされていたのだろう、と思った。やはり外観だろうか。その外観が損なわれたことによって、ルークと呼んで良いかわからないのだろうか。それでは、ルークはどこへ行ってしまったのだろう。ルークの住民たちは、ルークの住民という属性を失って、何者になってしまったのだろう。ルークやその住民たちは、焼かれた生き物のように、戻っては来ないだろう。
 シャドウはナイツとナイリアとポーンに元ルークの住民たちが集まっている場所で待っているようにいい、最初に向かったメカチャオ地点へと意味もなく再び向かった。
 屋上から入ったシャドウはまた同じルートを辿った。追ってくる何かの気配はもうなかった。ゆっくりと歩きながら前回通った、どれくらい走っただろう、と思った地点を通り過ぎる。似たような通路を歩いていても区別はつくものなのだな、とシャドウは思った。
 途中から前回と違ったルートを通り始めると、下へと向かう階段をシャドウは見つけた。階段を下りると、やはり同じような構造の通路が続いていた。だが、違う点もある。曲がり角が増えていたり、減っていたり、違う方向へ曲がっていたりする。シャドウは出来るだけ、そういう道を進むようにした。
 しばらく歩き続けると、また下へと向かう階段が見え始めた。同じペースでシャドウは階段の方へと歩く。そして、シャドウの方へ向かってくる何かの気配をシャドウは感じた。追ってきた何かの気配と似ている。同じかもしれない。だが、不思議とシャドウは脅威に感じなかった。気配は階段を上りきったところで止まっていたが、シャドウはその横を通り過ぎて下の階へと向かった。

このページについて
掲載日
2010年2月21日
ページ番号
223 / 231
この作品について
タイトル
シャドウの冒険3
作者
ダーク
初回掲載
週刊チャオ第158号
最終掲載
2012年9月6日
連載期間
約7年5ヵ月14日