第三章 ~半透明~ 三十一話
山を半分程度下ったところで、マッスルたちは見覚えのある地点に辿りついた。様々な形をしている岩の中に、数匹のチャオが集まれそうな岩が一つあった。マッスルたちは以前この山を登ったとき、この岩の上に眠ったのだ。岩の上には土があり、ほとんど平面といっても良いくらいで、ゴツゴツした岩と比べれば寝心地は良かった。さらに、この岩の上にも小さな岩がいくつかあり、座りやすい岩もあれば寄りかかりやすい岩もある。休憩するには都合が良すぎるくらいの岩だ。
さらに、上からその場所を見ようとすると、近くの岩の上にあるものが見えることにエイリアは気づいた。大きな鳥の巣である。中には何もいない。だが、巣があるということは、鳥がいたということだ。鳥はどこへ行ってしまったのだろう、とエイリアは思った。
「そろそろ休む?」
ラルドの提案に反対するものはいなかった。息を切らして倒れこんでいるバウスが要因の一つだろう。こうして、マッスルたちはまたこの場所で休むこととなった。
「お前はどうしてそんなにスタミナがないんだ」
ラインは弾が入っていない銃の銃身でバウスの頭を小突いた。
「うるさい」
バウスはうつぶせに倒れたまま動かない。
「まぁまぁ、バウスはよくがんばったよ」
エイリアがそういうと、ラインは口篭った。相変わらず、ラインは女性と接するのが苦手のようだ。
「そういえば、あの機械ってバウスが作ったの?」とエイリア。
「あの機械?あぁ、地図が表示されるモニタか。確かにあれはワシが作った」
バウスは起き上がり、近くの小さな岩に座った。
「すごーい。他には何があるの?」
「大したものはないぞ。簡単なリモートコントロール型爆弾とか、スーマを撮ったような撮影機とか、その他もろもろだな。機械よりも、エイリアの魔法の方がよほどすごいとワシは感じるがなぁ」
「そう?簡単だけど」
「魔法がなかった時代もあったんだぞ」
「バウスってそんなに昔から生きてるの?」
「いや、歴史を学んだんだ。ストロフが世に出てきた頃は凄かったようだな」
「ストロフって魔法を世界で初めて使ったんだっけ?」
「そうだ。さらに、その魔法力をもって世界の根本的な部分を作り変えて、魔法を使えるものとしてしまったんだな」
「すごいよね。親はどんなチャオだったんだろ」
「彼は初代のチャオだ。発見された彼のタマゴはノイズのような模様をしてたそうだ」
「なんか想像できないね。そういえば、魔法ってあったほうがいいと思う?」
「なんともいえんな。あった方が良かったといえる部分もあるし、なかった方が良かったといえる部分もある。だが、実際にはあるのだから、なかった方が良いなんて文句言っていてもしょうがないな。ワシは魔法使えんから説得力に欠けるかもしれんが」
「ううん、そんなことないよ。納得したよ」
「そうか、良かったよ」