第三章 ~半透明~ 二十三話
満腹になったマッスルは機嫌が良かった。
「よし、早く行こうぜ」
そういうマッスルに、どこに行くかをまだ決めていないことを教えるのは、やはりシャドウの役目だった。
シャドウがその旨を伝えると、キャプシティの出入り口から外へ出ようとしていたマッスルはシャドウ達のもとへ戻ってきた。
「じゃあ、どこへ行くか決めようぜ」
マッスルのその一言で始まった話し合いは、すぐに終わった。さきほどキャプシティの町長が、メカチャオに関する情報を提供してくれたからだ。キャプシティから見て西の方角にある、ルークという田舎町でのメカチャオの目撃情報だ。これだけで決定だ。行き先はルークだ。
ルークまで行く手段の中で選んだのは、徒歩だった。というよりは、徒歩でしか行けないのだ。仲間達が全員乗れる車のようなものもあったが、険しい山を越えなくてはならないので、選択肢から外れた。ルークに行くには、山を越え、バウスの家がある町を通り過ぎ、もう一度山を越えなくてはならない。辿り着くにはかなり時間がいるだろうとバウスは思った。だが、徒歩でしかいけないのならば仕様がない。
「あの山を越えるってことは、あの場所も通るんだな」
そういうマッスルの言葉に、シャドウ以外の仲間達は理解を示した。あの場所、というのは、スーマと会った場所のことだ。マッスルにとっては、カオスィヴと初めて会ったのもその近くなので、感慨深い場所だ。
「あの場所?」
シャドウはマッスルに尋ねる。当然ながら、シャドウはスーマとは会っていない。マッスルがシャドウにスーマと会った場所のことを教えると、シャドウは、そうか、とだけ言った。あまり驚きがないのは、レイシアの家で俺達がスーマと会ったということを言ったからだろうとマッスルは思った。
「私はあの場所通りたくないな」と小さな声で言ったのはナイリアだった。
「え、何で?」とマッスル。
「あの場所を通ったらスーマの怖さを思い出しちゃいそう」
「そうか。でも俺は通りたいな。やっぱり、同じ場所でもチャオによって価値が違うんだな」
「では、ナイリアは僕と空から目的地に向かうか?」と提案したのはシャドウだった。
「うん、それがいい」とナイリアはうなずく。
「え、それなら僕も空から行くよ」とナイツ。
「ナイリアをよろしくね」とエイリア。
この話し合いもすぐに結果が出た。空を飛んで行くのはシャドウとナイリアとナイツだ。それ以外の仲間達は徒歩だ。シャドウは早速魔法を使って、空を飛んでいた。ナイリアも魔法で作った大きな鳥に乗り、ナイツは自らの羽で飛んだ。
「もしも空から別の問題を発見したらその問題があるポイントへと飛んでいく。目的地に僕達がいなかったら、先にメカチャオの問題を対処してルークの目立つところで待っていてくれ」
「解った」とマッスル。
マッスルが了解するのを見たシャドウは西の方角へゆっくりと飛んでいった。それにナイリアとナイツがついていく。その珍しい光景を眺めてから、マッスル達もそれを追うように歩き始めた。