第三章 ~半透明~ 二十話

 ソニックはうつ伏せに倒れ、シャドウはそれを見下ろしていた。ソニックは薄れ行く意識の中で、シャドウを見上げた。シャドウは無傷だった。
「やられたな」とソニックは呟く。「疑問だらけだぜ」
「それに答えて何故僕が得をする」とシャドウ。「馬鹿だった。僕も、お前も」
 シャドウはもう一度、閃光をソニックに向けて放った。今度は頭を狙って、だ。閃光はソニックの頭を貫通し、ソニックは動かなくなった。これで終わりだ、とシャドウは思った。ソニックは、僕だったのかも知れない。僕は、僕を殺したのだ。僕は、もう僕には戻れない。戻ることは許されないのだ。
 シャドウはマッスルに近づいた。マッスルは生きていた。単に気絶しているだけで、重傷を負っている訳でもなかった。シャドウはマッスルに水の回復魔法をかけ、その重い体を背負った。最後にソニックをもう一度だけ見て、シャドウは荒野を後にした。


 キャプシティに入ってすぐに目に入ったのは、オルドがこちらに向かって走ってくる姿だった。オルドはシャドウの前で止まると、息を切らしながら言った。
「シャドウ様、あなたがいなくなったら、僕はあなたに認めてもらえない。どうか、命は大切にしてください。でも、良かった」
 オルドはその場に座り込んでしまった。安心したようだ。シャドウはそんなオルドを支えて立ち上がらせ、共に町長のところへ行くことにした。
 町長はやはり、役場の町長の部屋にいた。そこには町長だけでなく、仲間達がいた。丁度扉の方を向いて座っていた町長がシャドウの存在に気付くと、その様子を見た仲間達がシャドウの方を見る。だが誰も口を開かない。それもそうだろう、とシャドウは思う。僕は自分勝手なことをしたのだ。それに、その行動によって発生する影響は、いまだかつてないほどに大きくなる可能性があった。今回は、偶然生き残れたようなものだ。結果良ければ全て良し、という言葉があるが、その過程において発生した影響が結果に内包されるのならば、今回のケースは結果も良いとはいえないものだった。結果は僕一人だけのものではない。それは、今の仲間達の顔を見ても解る。
 シャドウはマッスルをオルドに任せて、仲間達の方を向いた。
「僕が悪かった。これからも共に行動をする許しを頂けないだろうか」
 シャドウは土下座をした。それを見た仲間達は驚いて顔を見合わせる。その中で、バウスだけはシャドウから目を離さなかった。
「ワシは良いと思うが、みんなはどうかな」
 バウスはナイツの方を見る。ナイツは突然答えを求められて驚いたが、すぐに落ち着きを取り戻し、いいよ、と答えた。
 それから、エイリア、ナイリア、ライン、ラルドの順番で、いい、との許しをシャドウはもらった。
「ありがとう、みんな」とシャドウは再び頭を下げた。「これからもよろしく頼む」

このページについて
掲載日
2009年11月22日
ページ番号
211 / 231
この作品について
タイトル
シャドウの冒険3
作者
ダーク
初回掲載
週刊チャオ第158号
最終掲載
2012年9月6日
連載期間
約7年5ヵ月14日