第三章 ~半透明~ 十七話
二本目の剣を取り出したソニックは、剣の射程内にいる二人を二本の剣で薙ぎ払った。シャドウは剣をかわし、ソニックから離れる。が、マッスルは腹を切られながらもソニックを殴り飛ばした。尚もマッスルはその進行を止めない。ソニックはすぐさま体勢を立て直し、黒い剣を振って衝撃波を発生させた。マッスルは吹き飛ばされた。ソニックもその衝撃波で飛ばされる。この衝撃波は本物の衝撃波だ。衝撃の波動。先ほどマッスルに振り払われたのは、どちらかといえば魔法で作った衝撃弾に近いだろう。その程度の小細工では、振り払われるのが当然なのかもしれない。
それでもソニックは焦っていた。今回のように剣を振られたら、普通は反射的に回避行動を起こそうとするものなのだ。マッスルは普通じゃない。
マッスルは、飛ばされた地点から拳をソニックの方へ向けて突き出した。マッスルの衝撃波だ。マッスルの衝撃波は、魔法による衝撃弾だ。魔法力を手にまとい、それを突き出す推進力で飛ばすのだ。マッスルの魔法力はとても弱々しいものなのだが、突き出す推進力が尋常じゃない。ソニックも、それらのことを大体理解している。そして、それを打ち破る方法も解っている。魔法力と推進力のどちらかが勝っているものをぶつければ良いのだ。そうすれば相殺する。魔法力が負ければ推進力が芯を失って霧散する。推進力が負ければ魔法力が推進力を失って霧散する。相殺せずに打ち抜くには、魔法力と推進力の両方が勝るか、魔法力と推進力の合計の差が一定の量を超えるかすればいい。ちなみに、属性を考慮しなければほとんどの魔法の優劣はこれで決定される。戦闘の上級者は、後者で相手の魔法を打ち抜くことが多い。それも、魔法力の差が勝敗を決めるといっても過言ではない。推進力がほとんど捨てられているこの世界で、推進力を武器にして闘ってきたマッスルは凄い。
さっきからマッスルに感心してばかりだな、とソニックは思う。
感心ばかりしていてもしょうがない、とソニックは両方の剣を構える。そして、破壊刃を放つ。破壊刃は、魔法力も推進力もバランスよく持っている上に、他の魔法のように独立しているのではなく、破壊という特殊な属性を持っていて、目標の破壊に優れた技だ。破壊刃はマッスルの衝撃波を打ち抜き、マッスルに向かっていく。
そこでソニックは、自分の横の方からシャドウが高速で接近してくること気付いた。シャドウは槍で乱れ突きをする。ソニックは後ろに飛びのくが、シャドウはそれ以上の速さで接近してくる。避けても意味がない、そう思ったソニックは黒い剣を振って衝撃波を発生させた。自分も飛ばされるが、距離も取れて一石二鳥だ。シャドウも飛ばされ、ソニックから大きく離れた。
だが、まだ着地していない隙をついたのか、ソニックには解らないが、飛んでいるソニックをマッスルが襲った。先程の破壊刃はもうすでにどこにも見当たらなかった。そんなことを思ったのも束の間、マッスルがソニックの顔面を殴りつけた。