第三章 ~半透明~ 十五話
やはり誰も引き返そうとはしなかった。と、思われたが、バウスだけは他の仲間達と表情が違って見えた。そして、僕の目は正しいということが解った。
「もう、止めても止まらんのだろうな」
バウスは僕を睨みつけていた。他の仲間たちはバウスを見ていた。
「そうだ」
僕は強い口調でいう。だが、バウスは怯まない。
「ソニックがまだ町を襲わない可能性もある」
「襲う可能性も、だ」
「襲われても襲われなくても負けるから、さっさと負けに行くのか」
つまり、バウスは僕が投げやりになっていると言いたいのか。バウス、その通りだ。だが、僕は負けるつもりはない。
「ソニックは間違いなく、すぐに町を襲ってくる。僕たちが向かおうが、ソニックから来ようが変わらない。それに、荒野で戦った方が周囲への被害は少ない」
もどかしい。違う。今は周囲への被害など考慮していない。荒野の方が動きやすいだけだ。ソニックを殺すのに町は邪魔だ。
「何故ソニックが襲ってくると解る?」
「解るから、だ」
そう、僕には解っている。解るから解るのだ。ヤツのことは何故か解る。当然ながら、バウスは納得しなかった。
「非論理的だな。ワシは全力を尽くして抗うぞ」
そういってバウスは来た道を戻っていった。何をするつもりかは知らないが、それはそれで構わない。バウスには悪いが、戦力外は邪魔だ。
「アイツを一人にはできない」
バウスが遠ざかっていく中、そう言ったのはラインだった。ラインは僕たちの反応を待たずに、走ってバウスの後を追っていった。
「お前たちは」
そういって僕は残りの仲間達の方を見る。
少し時間が空き、ナイツが口を開いた。
「殺される覚悟もある。殺す覚悟もある。でも、世界を終わらせる覚悟はない」
ナイツはエイリアとナイリアを見た。エイリアとナイリアはうなずいた。
二人もナイツと同意見のようだ。
マッスルがいる。ソニックがいる方へと歩いていく。僕も行く。
シャドウからはシャドウがいなくなり、またマッスルからもマッスルがいなくなった。