第三章 ~半透明~ 十四話

 役場に戻ると中にいたチャオたちは一斉にこちらを見た。事情を知りたいのだろうが、誰も近寄ってこない。町長を待っているのだろうか。事情を聞いて、それを町長に伝えるというのも悪くないと思うのだが、もしかしたらそんなことをするまでもないくらいに近い場所に町長がいるのかもしれない。
 案の定、町長はすぐにラルドがいた部屋の方からラルドと共に走ってきた。
「だ、大丈夫でしたか。彼はどうしましたか」と町長。
「暇つぶしに来ただけ、らしい。もう帰っていった」
 シャドウはそういいながら、ソニックは、と思った。目的を持たずにこの町に来て、何をするのかは来てから決めるつもりだったのだろう。そこに僕たちが現れた。今回は凌いだが、逆効果だったかもしれない。僕たちがここに戻ってきたということが知られてしまった。次の暇つぶしには、おそらく目的を持っているだろう。
「僕達はすぐにでもソニックのところへと行く。このままここにいたら、今後ここで戦闘するということが起こるかもしれない」
 町長は険しい顔をしてうなずいた。その後の会話を済まして役場を出ると、ラルドがついてきた。ラルドは僕がラルドの顔を見たことを確認し、しばらく時間をおいてから言った。
「どうするの」
「戦う」
「勝てないんじゃないの」
「この町が壊されてしまう」
「他の町に移動しようよ」
「ソニックが二回も待つという保障はない」
「シャドウ達がいなくなったら、もうどうしようもないんだよ」
「もし万が一のことがあったら、カオスィヴを探し出して後のことを頼んでくれ」
「無責任。バカ。私の今の気持ち、わかる?」
「悔しい、か?」
「悲しい、だよ。シャドウ」

 僕たちは荒野の直前のところまで歩いて来ていた。ギルダンタウンを通ってきたが、以前来たときと比べてもあまり変わりはなかった。
「シャドウ」
 マッスルが僕の名前を呼ぶ。だがそれは、違うチャオを指して呼んでいるように感じられた。それでも、それは確かに僕を指していた。
「何だ」
「どうしようもないんだろ」
 その通りだった。僕はどうしようもないのだ。僕は町を守りたい。準備をする時間もほしい。二律背反というのだろうな。そして、半ば強引に町を選んでしまった。判断を焦ったのではない。思い切った、投げやりになったのどちらかだ。いや、この場合判断を思い切るのと、投げやりになるのは結果的に何が違うのだろう。
「すまない、みんな。ついてきてくれるか?」
 仲間たちは誰も戻ろうとしない。それもそうだろうな、とシャドウは思う。彼らは僕に黙ってついて来るのだ。だが彼らは無条件に僕についてくる訳ではない。自分で考え、僕が正しいと判断していつもついて来てくれるのだ。今回も僕が正しいと思っているのだろうか。いや、彼らもどうしようもないのだ。だから、僕についてきてしまったのだ。いまさら戻ろうという性格を持ったチャオはこの中にはいない。
「覚悟を決めろ」
 強引に選んでしまったこの半透明の心はもういらない。どうせ、いずれ消えてなくなるものだ。今捨ててしまっても悪いことにはならないだろう。僕はもう覚悟を決めていた。おそらく仲間達は決めてない。だから、口にする。
「ソニックを殺す」

このページについて
掲載日
2009年10月26日
ページ番号
205 / 231
この作品について
タイトル
シャドウの冒険3
作者
ダーク
初回掲載
週刊チャオ第158号
最終掲載
2012年9月6日
連載期間
約7年5ヵ月14日