第三章 ~半透明~ 十三話
スタジアムにて、オルドの能力によって現れたソニックと戦った僕達は、スタジアムの床に倒れていた。間一髪のところでオルドが実体化されたソニックを消さなければ、重傷だったかもしれない。仲間達に意識はあるようだ。
「まさか、僕でもコントロールできないなんて」
オルド自身も驚愕している。どうやら、実体化したソニックをコントロールできなかったようだ。まさか記憶の中から出てきたソニックも、自由奔放なヤツだとは。もしかしたら、僕達が感じていた自由奔放な印象がこの結果になったのかもしれない。
オルドは我に返ったようで、仲間達のもとに駆け寄って言葉をかけている。仲間達は起き上がって、痛みに顔を歪ませている。その中に、ラルドの姿はない。このスタジアムへ来る前に、また役場へと戻らせたのだ。戻らせて正解だった。
戦闘はすぐに終わった。オルドがソニックを出現させてから、三秒もかかっていないだろう。現れてすぐに剣を振ったと解った頃には、床はえぐれ、僕達は吹き飛ばされていた。あの荒野で見た凄まじい威力の技だ。すぐに二発目を放とうとしているソニックを見たオルドが戦闘を止めたのだ。
仲間達は回復魔法をかけあい、回復した。さすがに二戦目を始めることはない。これほどまでに実力に差が開いているのに戦ったところで何が得られるのか。もはや遊び程度にしかならない。だが、このまま何もしないわけにもいかない。僕達にはソニックを元に戻す責任がある。そのためには、何をすべきか。何をすべきか。ナニヲスベキカ。
ラルドにソニックに負けたことを話すと、複雑な表情をしていた。確かに、なんと言っていいのか解らないだろう。結局、僕も何をすべきか解らなかった。選択肢すら現れない。だが、そんな時に信じられない事態が発生した。ソニックが町へとやってきたのだ。
キャプシティのギルダンタウン側にある出入口に現れたソニックは、僕達が現れると溜息をついた。幸いにも、ソニックはここへ来てから何もしていないらしい。
「あっちの大陸は楽しかったか?」
ソニックはそういってこちらへと近づいてきた。あっちの大陸、というのはヘルゼアス大陸のことだろう。まさか、ソニックはヘルゼアス大陸を狙って僕達を飛ばしたのだろうか。
「待ちくたびれた頃に、なんとなくフラフラ来たらお前達がいたなんて、神は俺達を戦わせたいのか?」
ソニックはこんなことを言いながら笑っているが、戦う気が全く見られない。何が目的なのか。その疑問をソニックにぶつけると、ソニックは一言で答えた。
「暇つぶし」
暇つぶし。やはり、全く考えていることが解らない。まさか、暇つぶしに町を破壊しに来たのではないだろうな。そうなったら、状況はかなり厳しい。僕達はソニックにまだ手も足も出ない状態なのだ。それを先程実感したばかりだ。が、ソニックはそんな心配をよそに、
「そろそろ戻ろうかな。暇なんだから早く来てくれよ?」
といって、僕達に背を向けた。
「待て。意味が解らない。お前は何がしたい」
本当はここでおとなしく帰ってもらう方が良かったのかもしれない。だが、ここが何か重要な分岐点のような気がしたのだ。ここで帰したら、コイツに対する質問の答えは二度と聞けなくなる。そして、ソニックはゆっくり振り返ってこう答えた。
「なぁ、シャドウ。意味なんてなくてもいいじゃねぇか。俺がどこを歩こうが、何を壊そうが何も意味なんてない。意味なんて生き物が勝手につけるもんだろ?そんなもんに縛られても俺はつまらない。だから俺は自由にする」
ソニックはそういって町から遠ざかっていった。この答えは、何故か僕をやるせない気持ちにさせた。