第三章 ~半透明~ 十話
カイセンタウンは町の中にも川のように水が流れている不思議な町だった。家は水に浮かぶように建てられているが、何故水の上に建てられるのだろう。やや高めの位置にある家の玄関に続く階段が全ての家に見られた。川を小さなボートで移動して、階段の前に止めて家に入る、というのがこの町の常識らしい。だが、陸地がないわけでもなかった。ところどころに、川に沿うように陸地があったりして、独特の雰囲気を醸し出していた。この町は雨が降ったら大変なのだろう、とシャドウは思った。そういえば、昨日の夜に少し雨が降っていたが、この町にはあまり降らなかったのだろうか。
港に立っている仲間達は慣れない船旅のせいか、やや疲労気味に見える。睡眠をとっても慣れないところへいると疲れるのだろう。しかし、マッスルはそれほど疲れているようには見えない。首を回したり、腕を伸ばしたりしている。体をほぐし終わったのか、マッスルが口を開いた。
「で、この後どうするんだ?」
他の仲間達はシャドウを見た。予定は考えておいていたが、まだ仲間達には言っていない。船の中では、とにかく休んでほしかったからだ。
「西へ向かう。キャプシティに行かなければならない」
あの荒野にはソニックがいる。近辺の町へ被害を出していなければいいが、その可能性は少ないだろう。何故なら、ソニックは荒野を任されていた者だからだ。これまでも荒野を任されていて、近辺の町に被害が出ないということは、荒野を任された命令を守っているのだろう。
そして、キャプシティにはオルドがいる。
シャドウ達は、マール星の地図帳を一冊買った。どうやら、キャプシティまではそう遠くないようだ。地図帳を買う過程であまり大きくないボートを借りて店を何件か廻ったが、その中で見た情報誌にヘルゼアス大陸のことが書かれていた。
「ヘルゼアスの誕生」
見出しにそう書かれた記事には、ヘルゼアス大陸の3つの国が合併したと書かれていた。ヘルズの王は元々名だけであったようで、反対意見もほとんどなくゼアスの王がヘルゼアスの王となったらしい。セイのことについては、合併した、としか書かれていなかった。そういえば、あの二人はどうなったのだろうか。
「じゃあ、もうこの町を出発する?」
仲間達にそう尋ねたのはラルドだった。仲間達は肯定し、すぐに町を発つことになった。
町の出入口は1つしかなく、それも川の上をボートで出入りしなくてはならなかった。町を出ると大きな円形の湖のような場所に出た。大きな杭が湖を囲むように打ち付けられていて、そこにボートをロープで繋ぐようだ。シャドウ達もボートを杭に繋ぎ、キャプシティに向けて歩き出した。一つ山を越えて少し歩けばすぐに着く。それに、山といってもそれほど高くない小さな山だ。
だが、実際に山の近くまで来てみると山には林が茂っていることがわかった。木を刈って作ったような道もあったが、やけにうねった道である。しかし、道はそれしかないようなので、シャドウ達はその道を行くことにした。