第三章 ~半透明~ 八話
シャドウの質問内容は予想外だった。
難しい顔をして考え事をしていたように見えたので、
このような展開はラルドの想像力の範囲を大きく越えていた。
あるいは、シャドウにとっては難しい問題なのかもしれない。
過去にもシャドウは恋愛が分からないと言っていたような気もした。
しかし、返答となる言葉が全く思い浮かばない。
ラルド「え・・・あの・・・あれだよ・・・えーっと・・・。」
もはや全ての言葉が時間稼ぎにしかならない。
その上、こんな時に限って全く頭が働いてくれない。
「恋愛って何だ」という記号が頭の中で仁王立ちしている。
シャドウ「ラルドも分からないのか?」
と、シャドウが言った時に、やっとラルドの頭は動きを見せ始めた。
ラルド「そうだね・・・。恋愛っていうのは分からないんだよ。」
シャドウ「そうなのか。」
ラルドの頭は一回冷静に答えられたことによって元通りになっていた。
そして、ラルドの中にあった言葉が次々と出て行く。
ラルド「でも、相手を好きだってことだけは分かるよ。」
言った後にラルドは少し恥ずかしくなったが、シャドウは照れる様子も何も見せないのですぐにおさまった。
シャドウは「そうか。」と言う。
しかし、シャドウを見てラルドは直感的に気付いたが、
シャドウは恋愛感情がどのような気持ちかが分からないのではなく、恋愛感情がどのようなものかが分からないのだ。
そもそも、シャドウは感じること自体が普通のチャオよりも薄いのかもしれない。
そう思ったラルドは、もう一言言った。
ラルド「いや、やっぱり恋愛感情は分からないものなのかもね。」
シャドウにとっては、おそらくこれが正解に最も近いものなのだろう。
シャドウは納得したらしく、ラルドに礼を言った。
シャドウ「それで話は変わるが、肩は大丈夫か?」
ラルド「えっ?あ、あぁ、大丈夫だよ。」
先程、シャドウは感情が薄いと思った矢先に、シャドウに心配をされるラルド。
何か申し訳ないことをしてしまったような気持ちと同時に、仲間に想われて嬉しくなった。
シャドウ「そうか・・・。あの時は悪かった。
もう少し早く気付いていればあんなことにはならなかったのだが・・・。」
あのヘルズ王と闘った時、ラルドが肩を閃光で貫かれたことをシャドウは気にしていたようだ。
ラルドは「全然気にしてないよ」と笑顔で言った。
それに対して、シャドウはもう一度謝った。
シャドウ「この船にいられるのもあと一日くらいだ。休んでおいた方が良いだろう。」
ラルド「ありがと。ゆっくりさせてもらうよ。」
そして、マッスルとエイリアの話もキリがよくなったらしく、エイリアがラルドを呼んだ。
「長くなってごめんね、部屋に戻ろう」とエイリアは言った。
二人が部屋を出て行くとき、マッスルがラルドの肩を軽く叩いて「エイリアと話し込んじゃってごめんな」と言った。
ラルドは「ううん、気にしてないよ」と言ったが、
その前肩を叩いた時、マッスルはラルドの顔が少し歪んだような気がした。
二人が部屋に帰った後、マッスルはシャドウにラルドの肩のことを言った。
シャドウ「やはりか。無意識にかばっているような気がしていたが本当のようだな。」
マッスル「・・・しばらく休ませた方がいいんじゃないか?」
シャドウは黙った。
色々と思考を巡らせているらしい。
そして、しばらくしてからゆっくりと口を開いた。
続く...