第三章 ~半透明~ 七話
おかしい、前を向いていたはずなのにまた天井が見える。
マッスルがそう思った頃、額の辺りに激痛が走った。
部屋の扉を開けた瞬間、何者かの拳がマッスルの額を打ち抜いたのだ。
マッスルは廊下で大の字になって倒れている。
その光景を見ていたシャドウは部屋の中に槍を向けた。
そして、シャドウは犯人を見た。
シャドウの目の前にいたのはエイリアだった。
エイリアは槍を見て驚きのあまり目が全開だ。
シャドウは呆れながら槍をしまった。
丁度その頃、マッスルが額を抑えながら立ち上がった。
マッスル「イテェんですが。」
エイリア「そうですね。」
マッスル「そうですねじゃねぇだろカスがっ!!」
エイリア「私はカスガなんていう名前じゃないっ!!」
マッスル「もういいや・・・・・。」
対応の面倒臭さに負けたマッスルはおとなしく部屋に入った。
それに続き、シャドウも部屋に入った。
部屋の中にはラルドもいた。
何故この二人が部屋にいるかというと、
もちろん、マッスルに怪物呼ばわりされたからだ。
部屋に入ってすぐにマッスルを殴り飛ばすつもりだったが、
誰もいなかったので扉の前でずっと待っていたらしい。
エイリア「ちなみに、ラルドがやったら死ぬかもしれないから私がやったんだよ。」
と、一応妥協点もあるらしい。
しかし、仲間達の中で一番格闘技向きではない魔法使いのエイリアの拳がアレほどの威力を持っていたことは、ラルドも驚かされた。
おそらく仲間達は、もう一般のチャオでは到底届かない領域まで強くなっているだろう。
だがマッスル曰く、エイリアのパンチはシャドウと会う前からずっと強かったらしい。
当時、学校のクラスメイトであったという二人は喧嘩が絶えなかったようだ。
マッスル「でもまぁ、エイリアはナイツと会ってから少し丸くなったけどな。」
エイリア「それはまぁ・・・。マッスルには一回も青春が訪れなかったね。」
マッスル「うるせぇ黙って消えろ。好きなヤツ自体いなかったからいいんだよ。」
二人は学生時代の思い出話に花を咲かせるが、
全く話についていけないラルドは疎外感を感じていた。
シャドウはベッドに座って考え事をしているようだ。
どちらにも行きづらく、ラルドは一人うつむいていた。
そこに、考え事をしていたように見えたシャドウがラルドを呼んだ。
ラルド「どうしたの?」
ラルドは隣のマッスルのベッドに腰掛けてシャドウと向かい合った。
目がバッチリ合ってラルドは少し目をそらしたが、シャドウは気にしていないようだった。
そして、ラルドが口ごもってしまうほどの質問をした。
シャドウ「恋愛とはどういうものなんだ?」
続く...