第三章 ~半透明~ 零話
今、俺はこの空間にいる。
この空間には常に"全て"が在る。
"全て"が在る空間の真ん中に俺はいる。
俺がその"全て"を眺めていると、何処からか白い壁と黒い壁が現れた。
壁は俺の両側にあり、少しずつ迫ってくる。
壁は上にも下にも前にも後ろにも果てしない。
逃げ道はないのだ。
目を瞑っても、辺りをうろついても壁は迫り続けてくる。
いくら走り込んでも、何も変わらない。
迫ってくる壁を押し返しても、混乱と恐怖は激しくなり続ける。
俺はどうしようもない無力感を感じながら、
硬く白い壁と軟らかな黒い壁に押しつぶされた。
そして、俺は空を飛んだ。