第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 百六話
~レイシアの家~
今度は何を言い出すのかと思えば、
なんとレイシアは自分が500年前のカオストの王だと言うのだ。
今まで色々な知識があったとはいえ、これはすぐには信じられない話だ。
シャドウ「ま、待て。何故カオストの王が今、こんなところにいるんだ。」
それに対し、レイシアはさも当然かのように返答をする。
レイシア「ここらが霊感の強い土地って知ってるでしょ?
霊として呼び寄せられて、セイで転生したんだ。
セイも特殊な土地でね。セイで生まれたチャオっていうのは、大体特殊能力を持って生まれてくるんだよ。
オリさんも隊長さんもそうでしょ?オリさんはその魔法銃を作る能力、隊長さんは透明化能力。
それが僕には霊能力だっただけだよ。」
レイシアは飲み物を全部飲んだ。
そして、もう一回飲み物を汲みに席から離れた。
シャドウ「そ、そうなのか?二人とも。」
二人も、言い当てられて驚いているようだ。
今、レイシアが言ったのは本当のことなのだ。
ゼアス兵隊長がセイ出身というのは、誰もが初耳なので尚驚きだ。
カオスィヴとスーマが一緒にいたことや、
レイシアがカオストの王だったということは本当のことのようだ。
そして、レイシアは飲み物を汲み終えて席に戻ってきた。
レイシア「それにしても、昔持ってたタマゴはどうしたんだろうなぁ。」
レイシアの独り言は、毎回気になる単語が出てくる。
もちろん、シャドウはそれに食いつかない訳には行かない。
シャドウ「タマゴ?」
レイシア「昔、カオスィヴとスーマはカオストの兵士に入りたいって言ってきた時にね、
一つタマゴを持ってたんだよ。凄く大事そうにしててね。」
そして、カオスィヴに興味があるマッスルが食いついた。
マッスル「カオスィヴって、そん時どんな人だった?」
レイシア「凄く優しかったよ。
カオス・ピースのことは彼に教えてもらったことだしね。
何があってエンドリアもカオストも壊滅させちゃったのかは分からないけど。」
この時点だけでも、伝説の内容と実際の相違点がいくつか見えてきた。
カオスィヴはカオストに自ら兵士になったこと。
子供ではなく、タマゴを最初から持っていたこと。
壊滅させたのは、エンドリアだけではなくカオストもだったこと。
レイシア「でも、彼は本当に良い人だった。
僕も彼に殺されたんだけど、あの時の目は普通じゃなかった。
アレこそ、カオス・ピースにやられちゃったんじゃないか、って感じだったよ。」
どうやらカオスィヴは本当に良い人だったようだ。
国の王からコレだけの信頼を寄せるということは中々ないだろう。
そしてマッスルはもう一つ、ずっと聞きたかったことを聞いた。
マッスル「・・・あと、どうしてカオストはエンドリアに兵器を撃たなかったんですか?」
仲間達はハッとした。
マッスルの母は、カオストの先祖の被爆の影響ですぐに死んでしまったのだ。
それが今、王を目の前にしているマッスルが尋ねている。
レイシア「・・・ハッタリだったんだよ。ミサイルって。
でも、それが逆にエンドリアを焦らせてもっと巨大なミサイルを作られて最悪の結果になったんだ。
あの時どうしていたら良い結果になっていたのか、答えは出ていないけど、
キミ達が今回やり遂げてくれたのを見て、僕もエンドリアの王に直接交渉しに行くべきだったのかな、って今は思ってる。」
マッスルはそれを聞いて、やるせない気持ちになった。
そう思っているなら、何故その時そうしなかったのか。
しかし、今更それを言ってもどうにもならないマッスルは、もう一つの疑問をぶつけた。
マッスル「・・・北南大戦争の原因って何だったんだ?」
レイシア「ヘルゼアス戦争と同じだよ。
エンドリアに良い環境が偏っていたんだ。
カオスィヴが来た頃だったかな。
カオストの誰かがエンドリアに移住しようしたらしいんだけど、
不法侵入だかスパイだかで殺されたらしくて・・・。
何故かエンドリアはぶち切れ状態で、もう戦争開始だった。」
似ている。
ヘルゼアス戦争と似ている。
カオスト(ゼアス)がミサイルを撃てない状態で、
エンドリア(ヘルズ)がミサイルを作っていたところも。
道理で、レイシアがヘルゼアス戦争が良い形で終結することを望んでいたのだ。
自分がしてしまった過ちを、もう同じ形で終わらせて欲しくなかったのだ。
マッスルのやるせなさは消え、レイシアの生前の辛さが分かったような気がした。
レイシア「でも、僕は王失格だよ。
結果として、あんな酷い形で終わっちゃったんだから。
・・・まぁ、それは置いといて。これからキミ達はどうするの?」
シャドウ「僕達は・・・。」
続く...