第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 百二話
~崩壊後 ヘルズ城~
その謎の声がした方を向くと、水色の半透明のように見える一人のチャオがいた。
タイプは、ニュートラルノーマルタイプヒコウ二次進化のようだ。
よく見ると、地に足をつけていない。
そのチャオは飛ぶというより、スライドするようにシャドウ達に近づいた。
旧ヘルズ王の霊「申し遅れました。幽霊となりましたが、私は旧ヘルズ王です。」
その言葉にシャドウ達は驚いた。
なんとこのチャオは、あのフィムやブレドやガンダが敬っていた旧ヘルズ王だと言うのだ。
その証拠はないが、悪い雰囲気を漂わせてるわけでもなく、
「わざわざここに現れたということは何かがあるのだろう」
とシャドウ達は思い、このチャオを信じることにした。
シャドウ「それで、カオス・ピースとは・・・?」
カオス・ピース。
初めて聞く言葉だったが、先程の黒い球のことだ。
おそらく、シャドウ達のこの先にとても重要なことなのだろう。
旧ヘルズ王の霊「カオス・ピースとは、混沌の神から溢れたものです。
カオス・ピースはこの世の者に乗り移り、その者を"悪"に染めてしまいます。
先程あなた方が倒したヘルズ王も、ゼアス兵隊長にカオス・ピースが乗り移ったものなのです。」
そして、また聞きなれない単語。
"混沌の神"・・・。
悪に染めるということは、あまり良い者ではないのだろう。
オリ「ということは、さっきの黒い球はヘルズ王だったのか・・・!?」
オリは血相を変えて旧ヘルズ王の霊に詰め寄る。
旧ヘルズ王の霊「いえ・・・。彼はゼアス兵隊長というベースがあってこそのヘルズ王でした。
ゼアス兵隊長は乗り移られる前から強い者だったのでしょう。
乗り移られても、その心の強さはなくしていませんでした。」
オリは複雑な気持ちだった。
先程銃を向けたのがヘルズ王ではなかったというのは良いのだが、
それはゼアス兵隊長のお陰だったというのだ。
だが、ヘルズ王の死は覚悟していたオリは、すぐに立ち直ったようだった。
シャドウ「それで、混沌の神というのは?」
すると旧ヘルズ王の霊は悲しそうな顔をして言った。
旧ヘルズ王の霊「すみません・・・。私には貴方達と話せる時間が限られているので、伝えたいことだけを伝えさせてください。」
そう言っている間にも、旧ヘルズ王の霊の姿は少しずつ見えなくなり始めている。
それを見たシャドウ達は、黙って話を聞くことにした。
旧ヘルズ王の霊「ありがとうございます・・・。
私はヘルズ城で貴方達に暗黒事件の映像を見せてきました。
それは、なんとしてでもヘルゼアス大陸を守りたいと思ったからです。
あの日の事実を知るものは全て死して、このような形でしか事実を伝えることが出来ませんでした。
王の間は、カオス・ピースの直接の力が強く、シャドウさんにしか見せることが出来ませんでしたが、
それでも貴方達はこの戦争を終わらせてくれました。
これで、死んでいったヘルズの者達の気も楽になるでしょう・・・。
本当にありがとうございました・・・。
カオス・ピースなどの詳しいことが聞きたいのでしたら、レイシアさんに会って下さい・・・。」
そして、旧ヘルズ王の霊は完全に見えなくなった。
彼が言いたかったのは、ヘルズの死んだ者を代表してのお礼だったのだ。
そして「レイシアさんに会って下さい」という最後の言葉。
おそらく、レイシアはカオス・ピースのことを知っているのだろう。
シャドウ「・・・レイシアのところに行こう。」
と、区切ってまたシャドウは言葉を続ける。
シャドウ「と言いたいところだが、ゼアス兵隊長を治療しよう。」
そう、話の中で分かったのは、
ゼアス兵隊長は乗り移られる前もゼアス兵隊長として生活をしていたのだ。
そして、エイリアはゼアス兵隊長に水の魔法をかけた。
続く...