第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 八十八話
~王の間~
ヘルズ王の手から放たれた閃光を、シャドウはかろうじて避けた。
反撃をしようとヘルズ王にカオスレイを放とうとすると、
ヘルズ王がクリスタルに包まれてフワフワと宙を浮いている仲間達を狙っているのが見えた。
ヘルズ王はニヤリと笑うと、ナイツの入ったクリスタルに向かって閃光を放った。
シャドウはカオスレイの標的を閃光へと変え、放つ。
そのカオスレイは、今までのカオスレイとは比べ物にならないくらい速く、気が強いのが分かる。
そのカオスレイは、閃光を打ち破って王の間の天井に大きな穴を空けた。
シャドウはヘルズ王を睨みつける。
それに対し、ヘルズ王は無表情でシャドウを見る。
ヘルズ王「・・・お前は、手を抜いて闘っているだろう。本気を出せば私などすぐに倒せるくらいの実力だ。」
シャドウは否定しようとはしない。
仲間達もそれが何故か分かっている。
というより、仲間達もそうなのだ。
ヘルズ王「私がそこのオリの父の体を使っているから、だろう。動きは凄まじく良いのに、攻撃に殺意が感じられん。」
オリは仲間達を見る。
三人とも同じ顔をしている。
敵に図星を突かれて、何も言い返せない、といった顔だ。
それを見たオリは、一言強く言う。
オリ「・・・・・覚悟は出来ている!」
その言葉に、三人はハッとした。
何のためにここまで来たのか。
オリが何故ここにいるのか。
何故闘っているのか。
それを瞬時に分かった三人は『本気』になった。
シャドウ「そうだな、お遊びはここまでだ。」
実力はシャドウ達の方が上、と先程言っておきながら、
不敵な笑みを零しているヘルズ王。
ヘルズ王「その通りだ。私もただやられるわけにはいかない。」
ヘルズ王がそう言うと、ヘルズ王から黒いオーラが溢れ出した。
頭上には黒いモヤモヤした球が現れている。
ヘルズ王にどんどん力が集まっているのが分かる。
その間、シャドウ達は謎の威圧感、いや後ろに引っ張られているのだろうか、少しも前に進めない。
そして、ヘルズ王の頭上の黒い球がヘルズ王に入っていく。
辺りは真っ暗になり、地に足をつけている感覚がなくなる。
遠くて何かが崩れ落ちていくような音がする。
そして、視界がハッキリしてくる—。
そこは崩れ去った城のガレキが沢山ある場所。
そして誰が予想していたか、城の中でしか見えなかったあの映像が見え始める。
きっとこの映像が最後の大事な映像となるのだろう、とシャドウは直感的に思った。
映像の世界には、シャドウ以外の仲間がいない。
つまり、シャドウにしか見えていない映像。
そしていつもよりノイズが強い。
その中でシャドウは目を凝らし、信じられない事実を見た。
続く