第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 八十七話
~王の間~
ヘルズ王がラルドを捉えようと、
手を突き出して閃光をいつでも放てる態勢にある中、
オリがヘルズ王に向かって銃を撃つ。
もちろん、ヘルズ王はオリにターゲットを変え、閃光を放とうとした。
が、ヘルズ王は後ろからラルドに羽交い絞めにされ、閃光は放てなかった。
それでもヘルズ王は体から魔法による波動を周囲に放ち、ラルドと銃弾を吹き飛ばした。
ラルドは壁に叩きつけられたが、すぐに立ち上がった。
ラルド「なんて強引な・・・。」
ラルドは両手に気を集中し始めた。
サイド・エネルギーだ。
両手の気を一つにまとめ、大きな光線として放つ大技だ。
ヘルズ王は波動を放った後の体力消費のせいか、
ラルドが気を集めているのに気付かない。
そして、その体力消費の隙を狙って、オリは銃を撃つ。
だが、その銃声がヘルズ王の集中力をまた元に戻してしまった。
銃弾を手で弾くと、気を集めているラルドの方を向き閃光を放った。
それと同時にラルドもサイド・エネルギーを放った。
閃光とサイド・エネルギーは激しくぶつかり合うということはなく、
一瞬で二つとも消え去ってしまった。
ラルド「な、相殺された・・・?」
ラルドは驚きを見せる。
サイド・エネルギーは言ってみればラルドの必殺技だ。
今まで、そう簡単に破られることはなかったものだ。
それが、ヘルズ王が即興で放った閃光に相殺されてしまったのだ。
ラルドは少し憤るが、ヘルズ王は少し疲れを見せながらも言う。
ヘルズ王「相殺される、か・・・。やはり三大魔法は上手く扱えないものだ・・・。」
その三大魔法という聞き慣れない単語に、シャドウ達は動きを止める。
ヘルズ王「知らないのも無理はない。使えるのはごく僅かな者だけ。
消滅魔法、封印魔法、無限魔法の三つ。私の閃光は未完成の消滅魔法だ。
だが未完成と言えど消滅魔法と相殺出来るということは、その技は危険な技なのだろう・・・。」
消滅魔法と相殺・・・。
つまり、ラルドのサイド・エネルギーは下手をすれば三大魔法にも肩を並べるかも知れないということだ。
だが、ヘルズ王の言葉をよく聞けば「封印魔法」も三大魔法という。
ヘルズ王は先程封印魔法を使った。
消滅魔法と同じく未完成なのかもしれないが、ヘルズ王はその三大魔法を二つも使えるということなのだ。
いや、それだけではない。
シャドウ達の心には、ヘルズ王は二つ使えるということは、
もう一つの「無限魔法」も使えるかも知れない、という疑念が植え付けられた。
ヘルズ王の単なる説明とも捉えられるような言葉が、
シャドウ達の心には強く影響を及ぼしていた。
ヘルズ王「・・・お喋りは終わりだ。」
ヘルズ王は体力を取り戻していた。
そう、このヘルズ王の話は策略だったのだ。
体力を回復させるための時間稼ぎ。
心を惑わせたのは意図していなかったらしいが、それもあって今空気はヘルズ王のものになりかけている。
そしてシャドウに向けられたヘルズ王の閃光が、またゴングを鳴らした。
続く