第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 八十五話
~王の間~
王は、ただ飛び掛ってくるブレドを侮蔑した目で見る。
だが、そんなことはお構いなしにブレドを勢いよく剣を振り上げる。
ブレド「終わりだ!」
そして、ブレドの剣が届く範囲まで近づいた時、ブレドは思い切り剣を振り下ろした。
だが、ブレドの目に映っているのは、不気味な笑みを浮かべている王が遠ざかっていく姿。
いや、遠ざかっているのは王ではない。ブレドだ。
そして、腹の辺りが熱いのと同時に妙な違和感。
それが何か分からないまま、ブレドは床に叩きつけられた。
体は殆ど動かず、直感的に死が近いのを感じたブレドは思う。
ブレド(が、ガンダ・・・。私の代わりに・・・。)
だが、床に倒れながらも見えた光景は、腹に穴が空き、倒れているガンダの姿だった。
それを見て、自分の腹にも穴が空いていることを理解した。
そのあまりにも悲しい状況を見たブレドの耳に聞こえるのは、あの憎い偽者の声。
ヘルズ王「今まで働いてくれた分のお礼だ。フィムを殺した技で、フィムと同じところへ逝かせてやろう。」
どうやら、二人の腹を貫いたのはフィムを殺したあの閃光のようだ。
それも、王から見てブレドとガンダが重なるまで待って、一つの閃光で二人を貫いたらしい。
そんな余裕を持たせながら腹に風穴を空けられたブレドは絶望するよりも先に、
もう既に灰色の繭に包まれているガンダの方を見て声を絞り出す。
ブレド「ガンダ・・・。私達のやりたいことは達成できなかったが・・・・・。
叶わないと知りながら望んでいた・・・、王と私達三人衆と兵士達の楽しかったあの日々にまた戻ろう・・・・・。」
そして、ブレドはシャドウ達の方を向き、微笑を浮かべると灰色の繭に包まれ消えていった。
先程までこの部屋にいたヘルズ三人衆は、
すべてヘルズ王の手によっていなくなった。
フィム。
彼は変わってしまった王をも受け入れようと努力し、王に忠誠を尽くし続けてきた。
そして、その王が本当の意味で偽者と知らないまま死んでいった。
ブレド、ガンダ。
彼らは洗脳されても忠誠心だけで洗脳を解き、
最後まで本当の王への忠誠を誓おうと敵に向かっていったヘルズの兵士達だ。
シャドウはそんな彼らを想いながら、ヘルズ王に溢れ出す闘気を見せる。
ヘルズ王「脅しているつもりか?中々やるようだが、そんなもので有利になろうなどとはまだ甘い。」
シャドウ「・・・貴様は分かってない。これ以上喋るな・・・・・!」
ヘルズ王「雑魚が・・・・・。かかってこい・・・!」
続く