第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 八十三話
~王の間~
場の空気が凍り付いている。
シャドウは倒れ、ブレドはそれを見下ろす。
まるで時間が止まっているのではないか、と思うほどに王の間は静かだ。
仲間達が見たシャドウのカオスレイは、間違いなく『跳ね返されて』いた。
その能力は紛れもなく、ヤツの能力だ。
そして仲間達はそのヤツがいる方を見る。
そこには・・・・・・。
なんと、倒れているマッスル、ラルド、ナイリアを背にコチラを向いているガンダの姿があった。
その王の間の光景に仲間達は多くの疑問を抱いていた。
だが、疑問がどうであれ今ここにある光景は事実なのだ。
今、格闘技や武器などの打撃系の戦闘を得意とする仲間はいない。
ガンダを打撃で抑えない限り、魔法や銃などの間接的な技は通用しない。
何をすれば目の前の二人を倒せるのか。
仲間達が焦った思考を巡らせる中、仲間の一人が行動に移っていた。
そのチャオはガンダに向かって一直線に走る。
ナイツ「エイリアさん!?無茶だよ!」
そう、走り出したチャオはエイリアだった。
その無茶な行動に対し、あのガンダが『攻撃態勢』に移る。
もう何もかもがめちゃくちゃだったが、エイリアは至って冷静だ。
そして、ガンダとの距離がわずかとなり、ガンダが攻撃をしようとした瞬間、そのエイリアの自信が形となって見せ付けられる。
バシャン!という音と共に、エイリアは水しぶきとなって消えてしまう。
気付けば、エイリアは倒れている三人の仲間達のところへいた。
これは、エイリアの得意としている『水分身』だろう。
水分身は、自分の形をした水を魔法で固めて作り、
その偽者が相手の気を引いているうちに自分は瞬間移動する技だ。
まさにこの場に最適な技だった。
そしてエイリアはその三人の仲間に回復魔法をかけ、表情を和らげた。
エイリア「みんな、大丈夫・・・?」
倒れていた三人は起き上がり、答える。
マッスル「エ、エイリア・・・。無茶させて悪かった・・・。」
ラルド「本当に不覚だった・・・。ヤツは攻撃をしないものだと変な思い込みをしていた・・・。エイリア、すまなかった・・・。」
ナイリア「お母さん・・・。」
エイリア「良かった、みんな大丈夫みたいで。」
そして、ここで一つの事実をマッスルの口から告げられる。
マッスル「みんな、意識さえ向けばガンダの能力をブレドに共有できるように、ブレドもガンダに能力を共有することが出来るみたいだ。」
そう、ブレドとガンダは能力を共有し合えるのだ。
ガンダが攻撃をしてこないのでマッスルとラルドとナイリアで攻め込んでいたところ、
その時シャドウとの戦いをとめ、シャドウと話していたブレドはガンダに能力を共有させたのだ。
そして、ガンダの見えない剣閃によって油断していた三人は倒された、ということだった。
三人を倒したガンダは、ブレドに能力を共有させる意識だけを持てば良い。
そして、カオスレイが跳ね返されたのだ。
それが、あの瞬間に起きた全て。
シャドウ「・・・エイリア、強くなったな。」
そして倒れていたシャドウが突然起き上がる。
仲間達が驚くばかりか、優勢を突然ひっくり返されたブレドとガンダも驚きの表情を見せている。
エイリア「シャドウ・・・!」
続く