第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 七十五話
~魔法空間の部屋~
フィムはゆっくりと、自分の知識をシャドウ達に分け始めた。
その内容は、シャドウ達には驚くようなことばかりだ。
まず、フィムが実はヘルズ三人衆ではない、ということだ。
昔はヘルズ三人衆だったが、
戦争が始まって少し経った頃に一匹のチャオがヘルズ城に来て、
そのチャオにヘルズ三人衆の座を奪われたのだ。
しかも、そのチャオは戦場にいたオリのことを見て
「アレは私の息子だ。」と言ったそうだ。
そして、昔あった「ヘルズ城暗黒事件」のこと。
詳細は不明だが、ヘルズ城を一変させたという事件。
王が死に、兵士などは心を失ってしまったアンドロイドのようになった。
その後、なんと王の霊が王室に残っていて、
その霊の指示などで三人衆や兵士が国をまとめているというのだ。
「暗黒事件」という名前は、
その変わった後のヘルズ城のイメージから来ているそうだ。
そして「ヘルズ城暗黒事件」から少し経った頃に戦争が始まった。
例の戦争のきっかけとなった公開処刑は、王の霊の指示で行われたそうだ。
フィムが言うには「事件前の王はそういう方ではなかった」らしい。
以前から三人衆の中でも王に忠誠を誓い、
一番王と近い関係を持っていたのが自分、フィムだそうだ。
事件後、王が変わったのは気付いていたが、
決してフィムは王に逆らわず、寧ろ同じ志を抱くように努力した。
そして、フィムが三人衆ではなくなる日。
王はフィムに液体金属の能力を与え、上級兵士にさせた。
フィムは三人衆であることを何よりの誇りと思っていたので、
このことだけは王に抗議したらしい。
だが、答えが意外なことに
「三人衆と名乗っても良い。新しく入った三人衆も了解している。それに私は、お前の忠誠心を充分分かっている。飽くまで形だけのことだから、気にしないでくれ。」
と返されたのだ。
それに対し「何故他の二人のどちらかを降ろさないのか。」と尋ねたところ
「アイツらは二人揃って実力を発揮するからだ。」
と返され、複雑な心境のまま引き下がったそうだ。
だがその形にも慣れ、フィムはこれといって不自由することはなかった。
そして、今に至ると言うのだ。
シャドウ「良いのか、そんなことを僕達に言って。」
フィム「いいんですよ。ですが、私の王に対する忠誠心は変わりません。また貴方達の敵として私は立ち塞がることがあるでしょう。その時は覚悟してください。」
シャドウ「それはない。」
シャドウは即答した。
フィムは驚き、シャドウの顔を見た。
シャドウ「僕達の目的は、戦争に勝つことではなく戦争を終わらすことだ。そして、今日戦争を終わらせる。戦争が終わればお前と敵対することもないだろう。」
フィムは一瞬、シャドウに以前のヘルズ王を見た。
そう、フィムが本当に好きだった昔の王。
今の王に無理をしている訳ではないが、
昔と比べると確かに縛られた部分があるかも知れない、
とフィムは思い直した。
そのフィムは今、王に本当に従えた気持ちになれた。
フィム「私も・・・・・・力になりましょう。」
シャドウ「・・・本当にいいのか?」
フィム「はい。それでは、王のもとへ案内します。」
そして、フィムの少し大きく見える背中を追って部屋を出た。
続く