第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 七十三話

~魔法空間~

剣を振りかぶってシャドウに向かって突進してきたフィム。
だがシャドウとの距離が剣を振れば届くくらいの距離になった時、
フィムは動きを止めた。
シャドウには、明らかに避ける気も反撃する気も感じられない。
おそらくこのまま振ったら、シャドウを斬りつけられるだろう。
しかし、兵士と三人衆の誇りを掲げて闘っているフィムに、
このまま斬りつけるなんてことは許せなかった。

シャドウは、フィムが突進して来る頃には感じていたのだろう。
この戦いにかけられたフィムの誇り、覚悟・・・・・・。
そして、戦いの終わりが目の前まで近づいてきたこと。
それらを感じたシャドウは、敢えて何もしなかった。
結果、フィムは目の前で止まった。
斬りつけていた、という未来はシャドウにも、世界にもなかった。
今の目の前にあるのが全て。
その全てもシャドウには感じられていたのかも知れない。

フィム「何故、ですか・・・・・・?」

フィムは剣を下げ、少し後ろに下がりながら言った。
それに対しシャドウは答えた。

シャドウ「分かったからだ。」

その短い答えは、フィムには伝わったようだ。
だが、フィムはまた剣を構えた。
シャドウもフィムの目を見ながら、槍を構えた。

フィム「分かってくれましたか。」

そう、戦いの終わりはまだ目の前にあるのだ。
そこに辿り着かなければ戦いは終わらない。
シャドウとフィムの対峙を見たシャドウの仲間達は、離れて結末を見守った。


フィムの全ては剣に乗せられた。
二つの鮮やかな閃光がすり抜けあう。
確かに一瞬の出来事であった。
が、その閃光の交わりは、見ていた者の目に焼きつくように残っている。

そして・・・・・・結末。
パリィンという何故か綺麗な音と共にフィムの剣が割れた。
同時に、フィムは倒れた。

見守っていた仲間達はシャドウのもとへ駆け寄る。
だが、シャドウは槍はカランカランと見えない床に転がった。
仲間達は驚き、シャドウに色々な言葉をかける。
シャドウは一息つき、言った。

シャドウ「すまない、心配をかけて。腕に力が入らないだけだ。」

シャドウの言葉に仲間達は胸を撫で下ろし、
エイリアはシャドウに水の魔法で回復をさせた。
フィムの一撃(すべて)は、シャドウといえどダメージがあったようだ。
そして、回復したシャドウが槍を拾う頃、
苦しそうにフィムが立ち上がろうとした。
が、立ち上がれずにまた倒れこみ、仰向けになった。

シャドウ「フィム・・・・・・。」


続く

このページについて
掲載号
週刊チャオ第308号
ページ番号
156 / 231
この作品について
タイトル
シャドウの冒険3
作者
ダーク
初回掲載
週刊チャオ第158号
最終掲載
2012年9月6日
連載期間
約7年5ヵ月14日