第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 七十一話
~魔法空間~
自分が持っていた能力を相手がやってのけた。
その事態にフィムは驚きを隠せなかったが、
気を抜かずに下にある水溜りに対して警戒心を強めた。
だが後頭部に殴られたような衝撃。
フィムが描いていた展開とは違った。
目の前にある水溜りは、本当に水溜りでしかないのだ。
本物のエイリアは後ろにいた。
エイリア「自分と同じだと思ったでしょ?」
フィム「何ですか、今のは・・・・・。」
エイリア「水で作った自分の抜け殻を置いておいて自分は瞬間移動、ってところかな?」
エイリアは言い終えると、その瞬間移動でマッスルの隣に移動した。
マッスルはエイリアの水の魔法で回復した。
フィム「・・・・・一杯食わされましたね。」
フィムは落ち着いたまま、今度はナイリアの後ろへ移動した。
フィムは剣を振り上げるが、
ナイリアに気配を感じられ、すぐさま離れられた。
ナイリアもスピードはそこそこあるので、上手く距離を取った。
そして振り返ったと同時に、見えない魔法、バードボムを放った。
見えない鳥型の爆弾はフィムに直撃し、ダメージを与えた。
しかし爆発した後、フィムは煙の中からナイリアに向かって剣で衝撃波を放った。
とっさのことで反応できなかったナイリアだったが、
シャドウがナイリアを抱きかかえて離れたので衝撃波は当たらなかった。
ナイリア「あ、ありがとう!」
シャドウ「あぁ。」
煙が晴れると、フィムは剣を大きく振り上げていた。
今までの衝撃波などとは違う、強力な力を感じる。
シャドウ達は身構え、全員が反撃のチャンスを狙う。
だが、反撃などが出来るような技ではなかった。
フィムは見えない床に向かって思い切り剣を刺した。
するとガラスが割れるような音と共に、足場がなくなって無重力空間にいるような感覚になった。
フワフワと浮かぶシャドウ達だが、フィムの姿はどこにも見えない。
その中でフィムの姿を捉えたのはシャドウとラルドだけだった。
シャドウ「この空間を超スピードで動いているのか!?」
なんとフィムは剣を持ちながら、この空間を飛び回るようにして動いていたのだ。
もちろん、超スピードで動いている上に剣を持っているので、触れただけでも威力のある斬撃となるだろう。
ナイツ「ここは任せて!」
ナイツは空を飛べるので、態勢を安定させることが出来た。
決して無重力という訳ではないので、このような空間で体をコントロールできるものなら誰でも行動できるようだ。
ライン「俺もやってやるぜ。」
そう、ラインは空を飛べるのだ。
ラインは銃ではなく剣を持ち、構えた。
そして動けるものはさらに三人。
ラルド、エイリア、ナイリアだった。
つまり、メンバーの中で泳ぎが上手い三人だ。
この空間は泳ぐ感覚でも動けるようだ。
フィムを捉えているラルドを主力に、次の戦いが始まった。
続く