第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 四十五話
~レイシアの家~
レイシアは、ナイツとエイリアの質問に対し、淡々と答え始めた。
レイシア「何で登っちゃいけないか。まあ、見ての通り霊がたくさんいるよね。」
二人は頷くが、霊という断言に少し恐怖していた。
レイシアが霊能力者と聞いていた時から覚悟はしていたが、まだメンバーの中では幼さを残す二人にはこたえるようだ。
マッスルが霊に弱いのをからかったりする二人も、反省しようと思った。
そんな二人を見て、レイシアは面白がるようにクスクス笑った。
そしてさらに、その笑いを見てナイツとエイリアは怖がる。
レイシア「まあまあ、そんな怖がらないで。霊の中でもとても優しい子達もいるんだから。其処で寝てる仲間達を運んでくれたのも霊だしね。」
ホッとして良いのか、怖がって良いのか分からないナイツとエイリアは、とりあえず微笑を浮かべた。
ナイツ「や、やっぱりレイシアさんには霊が見えているんですか・・・・・?」
言ってる途中でまた怖くなってきたのか、語尾が少しずつ弱くなるような尋ね方になった。
レイシア「勿論、僕には見えているよ。そういえば、さっきから君達の後ろにも二人立っているよ。」
ナイツとエイリアの恐怖心は今にも限界に達しそうだ。
それを見てレイシアは満足したのか、話題を戻した。
レイシア「そう、それでね。この山はすごーく霊が住みやすくて、一番力を発揮出切る場所なんだよ。ま、もともとヘルズは霊感の強い土地だから住み易いんだけどね。その中でも一番なのがこの山だよ。」
ナイツ「そ、それで霊は山に登ってきたチャオに影響を及ぼすんですか?」
レイシア「そりゃあもうスゴイよ。さっき良い霊もいるって言ったけど、他にも戦争とかで死んだヤツもいる。そんなヤツらは大抵、自分を殺した相手や国に恨みを抱いてる。恨みや怒りなどの負の感情を持って死んだチャオ達は、山に入ってきたチャオを敵だと思い込んで殺したりしてる。だからこの山には登っちゃいけないんだよ。君達も危なかったね。」
そんな現実を否定したいのか、ナイツは食い下がった。
ナイツ「で、でも、実体がない霊に人殺しなんて出来るんですか?」
レイシアは先程から浮かべていた笑みを消し、言った。
レイシア「殺シ方トカ、ソンナニ聞 キ タ イ?」
レイシアの喋り方が恐ろしく、ナイツはまた黙ってしまった。
レイシア「ま、そんなに怖がらないで。兎に角、皆助かって良かったんだから。」
無反応の二人に対し、レイシアはとりあえずと質問をした。
レイシア「じゃあ、今度は僕が質問をするね。何でこの山を登ろうとしてたの?」
やっと現実味がある会話になってきた事を感じたエイリアが質問に答えた。
エイリア「ヘルズ城に行こうとしていたんです。」
レイシア「ヘルズ城?どうしてまたそんなところに。」
エイリア「戦争を終わらそ「待って。」
エイリアが喋っているところを、レイシアがとめた。
レイシア「さっきも言ったけど、戦争で死んだチャオもいるからね・・・・・。此処の霊が元々死んだのは大抵北南大戦争。あの戦争の終わり方がカオスィヴによる皆殺しだってことは知ってるでしょ?だから彼らにとって『戦争の終わり=どちらかの死』を意味する。君達の意思は分かったけど、今回は出来るだけ犠牲を減らして終わらせてくれ。そうすれば、此処の霊達も少しおとなしくなってくれるよ。霊達の代わりにお願いしておくよ。終わらせてくれる事を信じてるからね。」
少し興奮気味で早口のレイシアは深呼吸をすると、もう一言言った。
レイシア「ゴメンね・・・・・。」
その謝罪は、二人に向けられたものか霊に向けられたものかは分からないが、先程の必死さから充分に意思は伝わった。
ナイツ「絶対やり遂げます。」
レイシア「・・・・・ありがとう。じゃあ、君達も疲れてるでしょ。其処の空いているベッドで寝ていいよ。」
二人はお辞儀をしてベッドに寝転がると、すぐに深い眠りについた。
「今回の戦争は良い終わり方をするのでしょうか・・・・・?」
静かになった部屋に、霊の声が聞こえる。
レイシア「そう信じてくれ。ヘルゼアス戦争は第二の北南大戦争。一度目の失敗は二度目にはないよ。」
「『カオスィヴの皆殺し』・・・・・。」
レイシア「彼も悪いワケじゃないんだ。あの時の目は何かに取り憑かれた者の目だった。僕も最初の内に気付くべきだった。」
「私は信じない訳ではありません。ですが、他の者は未だに強い負の感情を抱いているようです。特に『カオスト』の兵だった者が・・・・・。」
レイシア「君はカオストの兵だったのに、彼に恨みはないのかい?」
「確かに私も彼に殺されましたが、アレは彼自身の目ではありません。だから、彼自身を恨む理由はありません。」
レイシア「ゴメンね・・・・・。」
「謝らないで下さい・・・・・。信じますよ。」
レイシア「・・・・・そうだね、ありがとう。」
続く