第二章 ~ヘルゼアス戦争~ 二十九話
~ヘルズ~
シャドウ達の前に現れた見覚えのあるチャオは、マッスルを見ながら
「残酷なものだ・・・・・。」
と呟いた。
マッスル「カオスィヴ・・・・・・。何で此処に・・・・・?」
そう、シャドウ達の前に現れたのはカオスィヴだった。
カオスィヴ「何で此処に、か。『私が来たから』とでも言っておこうか。」
マッスル(何を言ってるんだ・・・・・・?いや、答えてくれるなら一気に質問を・・・・・。)
他の仲間達も驚いていたが、凄い格闘家には憧れるマッスルを知っていたので、二人のやり取りを見守っていた。
オリは一歩前に出ようとしたが、シャドウのジェスチャーで行くのをやめた。
マッスル「あ、あの・・・・・。」
マッスルは珍しく緊張し、声が震えている。
カオスィヴ「答えよう。これもまた私のするべきこと。」
カオスィヴの不自然な言動にマッスルは戸惑ったが、質問をした。
マッスル「貴方は、貴方がいた無敵の流派とはなんですか・・・・・・?」
伝説では、無敵に近いと言われていた流派の中で最強の名を持っていて、その強さをカオストに買われ、カオストの兵士として雇われたと言われている。
だが、カオスィヴの答えはそれとは一致しなかった。
カオスィヴ「それは『伝説』とやらで、カオスィヴは無敵の流派に所属していた、と言われていたのか?」
マッスル「え、はい・・・・・。」
カオスィヴ「それは間違いだ。私は流派と言う流派には所属していなかった。」
マッスル「そうなのですか・・・・・。」
カオスィヴ「私もその『伝説』とやらが気になる。教えてくれないか?」
マッスル「え、あ、はい。」
マッスルはカオスィヴの伝説(※)をカオスィヴに伝えた。
カオスィヴ「・・・・・間違っている点が幾つかある。」
マッスル「お、教えてください。」
カオスィヴ「まず、私がカオストについたのはスカウトされたからではない。自分の意志でカオストについたのだ。そして、私が守ろうとしたのは黒き風の子のタマゴだ。そのタマゴもカオストの兵士に渡されたのではない。私が元々持っていたものだ。」
マッスル「黒き風の子とは・・・・・。何ですか?」
カオスィヴ「黒き風の子とは、その名の通り黒き風の子供だ。その力はタマゴの頃から溢れ出ていて、色々な者がその力に惹かれてタマゴに群がった。そう、今も・・・・・・。悪いが、これ以上は言えない。」
マッスル「はい・・・・・。ありがとうございます。」
マッスルは頭を下げた。
カオスィヴ「時が来た・・・・・。また会わなければいけない時に会おう。」
カオスィヴが後ろを向くと、マッスルがもう一度呼び止めた。
マッスル「待ってください!もう1つ聞かせてください!」
カオスィヴ「・・・・・・何だ?」
カオスィヴは後ろを向いたまま言った。
マッスル「俺も・・・・・。頑張れば貴方のようになれますか?」
カオスィヴ「・・・・・・良いことはない。心を殆ど失い、残った心で瀬戸際の中永い時を生きなければいけない、そんな中で使命を真っ当する。それが私の全て。それでも私のようになりたいのか?」
そう言うとカオスィヴはマントに包まれて消えた。
シャドウ「マッスル。」
呆然としていたマッスルの肩をシャドウが触れた。
マッスル「あ、あぁ。何かよく分かんなかった。でも、話が出来て良かったよ。気遣わせちゃって悪いな。」
オリ「あれがカオスィヴか。不思議なヤツだったな。」
マッスル「あぁ。」
マッスル(・・・・・俺にそんな大層な覚悟は・・・・・。)
~???~
カオスィヴ「1つやるべき事を終えてきた。」
???「そう・・・・・・。あの子に伝えたのね。」
カオスィヴ「まだ全ては教えていないがな。これでヤツの行動が左右される筈だ。こんな事をしなくてもヤツならやると思うが・・・・・・。これも使命だ。」
???「縛られた使命・・・・・。辛くないの?」
カオスィヴ「もう私には感情すらない。・・・・・『あの日』も近づいてきた。私達の永い旅も終わる。」
???「そう・・・・・ね。」
カオスィヴ「・・・・・・残酷なものだ。」
???「何が残酷・・・・・?」
カオスィヴ「世界、と言うべきか。」
???「『世界』ね・・・・・。」
続く
※第一章 十二話 参照